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腫瘍溶解性ウイルス療法(略してウイルス療法)は、脳腫瘍のうち悪性神経膠腫(あくせいしんけいこうしゅ)の治療として2021年に承認された、これまでにない発想に基づいた新しい治療法です。使われるのは「単純ヘルペスⅠ型」というウイルス。ウイルスががん細胞だけで増え、正常な細胞では増えないように遺伝情報を改変します。このウイルスをがん細胞に感染させると、次々にがん細胞を殺していくことが確かめられています。
👉 ウイルスの増殖力を利用したがん治療 腫瘍溶解性ウイルス療法(ウイルス療法)とは?

脊髄性筋萎縮症(SMA)とは、運動神経の遺伝子の変化が原因で、筋肉が弱っていく難病で、SMN1という遺伝子が変化していることが原因であることが分かっています。その遺伝子治療薬が2020年に承認されました。アデノ随伴ウイルスがもともと持っている遺伝子を取り除き、代わりにヒトのSMN1遺伝子を組み込みます。このように加工したウイルスによって、SMN1遺伝子を運動神経細胞の中に運ぶと、SMN1遺伝子が働いて、運動神経細胞が活発になり、筋肉が動くようになるといいます。
👉 難病の治療に光! 脊髄性筋萎縮症(SMA)の遺伝子治療とは?

CAR-T細胞療法は、2019年に承認された血液がんの最新治療です。血液がんには、白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などがあります。抗がん剤、放射線などの標準的な治療が行われますが、こうした治療に効果がなかった場合や再発した場合に、CAR-T細胞療法が行われることがあります。CAR-T細胞療法は、患者さん自身が持っている免疫細胞の一種、T細胞を血液から採取して、がんと戦うように強化してから体に戻すという高度な治療法です。
👉 血液がんの最新治療 CAR-T細胞療法とは?

手が震える、動作がゆっくりになる、歩行が困難になるといった症状が現れる神経の難病、パーキンソン病。遺伝子の運び屋(ウイルスベクター)を使ってパーキンソン病を治療する研究が行われています。これまでに実際の患者さんで行った臨床試験では、手の震えや歩行困難が改善する可能性が示されたといいます。2022年の秋には、実用化に向け、新たな治験が始まる予定です。
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