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ワーカーズコープ連合会 古村伸宏理事長に聞く!協同労働とは?

NHK
2021年5月25日 午後6:30 公開

労働者が出資し、経営にも関わる働き方、「協同労働」。都市における孤立、過疎や人手不足に悩む地域の課題を解決するなど、さまざま役割が期待され、コロナ禍のさなか、注目を浴びています。会社員や公務員などの働き方とは大きく異なる「協同労働」とは何なのか?日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会の理事長、古村伸宏さんに聞きました。

Q.労働者が「働きながら経営にも参加する」とはどういうことなんでしょうか?

古村伸宏さん

「経営の努力を、みんなでいろいろ工夫してやっていくということになります。しかしそれは、そう簡単な事ではありません。例えば、収入と支出の関係で言うと、収入を全部みんなに分けてしまえば、お金は残らないわけですよね。しかし、持続可能な経営ということを考えると、いざというときに備えてお金を貯めとかなきゃいけない。あるいは、労働条件を改善したり、自分たちの仕事量を調整することで、働けない人のための仕事を新たに作ったり、貯めたお金を使って新規事業を起こしたりもします。こうしたことの積み重ねを組合員の話し合いでやってきました。

協同労働はみんなで出資して行うのですが、出したお金の多い少ないで権限が違うわけではなく、1人1票で誰もが対等な立場です。対等であるがゆえに、物事を決めようとすると、時間がかかる。だからといって多数決でさっさと決めちゃうことは、協同労働が形骸化していくと私は思っています。大勢の意見を尊重するというよりは、少ない意見だとか、マイノリティの存在も尊重するべきだし、すごく時間をかけて経営の考え方を育てなきゃいけないのが協同労働なんです。本気でやろうとすると、どれだけお互いのことを理解し合ったり、認め合ったりできるかが問われると思います。それは民主主義を徹底することだと思います。」

「雇用労働と比較すると、一番深いところでの特徴は、人間性を取り戻したり、人間性をより豊かにしていく働き方だと思います。我々はもともと、失業者が生きていくために自分たちで働く場所をつくろう、ということから始まりました。

働き続けるためには、ただ何か仕事をしているだけではダメです。その仕事が自分にとって満足感があり、社会的にも支持されるものでなければ続かないと考えてきました。私たちはそうした仕事をシンプルに、「よい仕事」というキーワードで表現し、大切にしてきました。

そこで「よい仕事」をするために、我々がたどり着いた一番大事な答えは、仕事に対し、1人1人が主体性のある働き方をすることでした。そして、どうすれば主体性が高まるんだという中で出会ったのが協同労働だったんです。」

2020年12月、国会で「労働者協同組合法」が成立し、2年以内に施行されることが決まりました。協同労働は、いままでは法律がなかったため、NPOや企業組合の形で運営されてきました。そのため、こうした働き方が理解されず、取り組める業種が限られたり、新たな事業を始める手続きに時間がかかったりするなどの制約があったのです。

しかし、法律の施行後は、労働者派遣事業を除くさまざまな事業を行えたり、働く組合員は労働契約を交わすことが義務付けられ労働保険・健康保険などの社会保障の対象になったります。

Q.コロナ禍が雇用や企業経営に深刻なダメージを与えるいま、協同労働が法制化される意義は何でしょう?

古村伸宏さん

「時代的なめぐり合わせで成立したなという印象を強く持っています。働くことをめぐる様々な困難がどんどん広がっていて、とまっていない。

私は、1990年代のバブル崩壊以降、日本の経済をもう1回立て直そうという流れの中で、非正規という働き方がどんどん拡大され、その結果、働く行為がお金で換算され、部品や商品のように扱われるようになってきた、そういう20~30年かなと思っているんですね。そういう問題意識と協同労働の必要性がつながってきたということだと思います。

それと今回の法制化は、地方創生とか1億総活躍という政策絡みから本格化したんですよね。やっぱり東京以外のところは、経済全体が沈んで、人口も減って、地域の体をなしていかない、これを何とかしなきゃいけないということですよね。そういう地域のあり方を見直そうという動きは、協同労働以外の分野でも、例えば自治体の人たちの中でも、すべて税金使って何から何までやってあげるという時代ではなくて、もう1回、地域の中にあった自治の力というものを育て直したり編み直していこうという動きは相当広がってると思うんですよね。そういう、地域を自分たちで守り、よくしていこうという大きなフレームの中に協同労働という働き方を埋め込んでいくというのは、相当期待感を持たれていると考えています。

決して『誰も当事者ではありません』ということが言えない時代だと思いますので、やはり1人1人がもうちょっと主体的に社会のことを考えたり、社会を作ることに参加する。そこに協同労働という働き方がうまくハマっていったというのが今回の法制化の流れなんじゃないかというふうに私は思ってます。」

Q.協同労働についての問い合わせが増えているそうですね?

古村伸宏さん

「20代、30代の若い人たちからの相談が増えてきています。「環境や気候などの持続可能性にかかわるような取り組みを何とか仕事にできないか」というような内容です。従来はこうした事業を非営利団体(NPO、企業組合)などで行おうとすると、都道府県の認可が必要で、結構手間と時間のかかるものだったんです。

しかし、新法では、法律に定めてある条件が定款でクリアされてると、届け出をすれば設立できます。株式会社と同じくらい、作りやすくなりました。この感覚が若い人たちの中から徐々に広がっていくと、協同労働もさらに広がりをみせるのではないかと思っています。

最近は、協同労働が徐々に世間に認知されてきたせいか、利用者や地域の方からも、協賛金や、寄付など、いろんな形で応援しようという動きも出始めているんです。」

Q.今後の課題は何でしょうか?

古村伸宏さん

「現在取り組まれている事業は、どちらかといえば社会的評価が高くない領域が多く、経営の難しさや労働条件の改善が課題です。元々みんなでお金を出し合うといっても、どちらかというと、社会的には弱い立場に置かれていたり、さまざまな困難を抱えていたり、経済的に豊かだという人たちが多数ではありませんでした。

そのため、我々の取り組みは、当初あまりお金がかからないような仕事から始まっています。例えば、掃除とか草刈りみたいな仕事です。しかし、掃除の仕事1つとってみても、やっぱりものすごく大きな意味があり、絶対欠いてはならない仕事だと思います。

我々は、現在多くのエッセンシャルワークを手がけていて、こうした仕事の価値を今こそ見つめ直したいと思っています。そこにつながるような働き方が、協同労働だと思うんです。人と人が困ったときこそ助け合わなきゃいけない、そういったことにかかわる仕事の価値というものがもう1回見直されていくという、そういう契機なんじゃないかなというふうに思っています。」

Q.協同労働の未来にどのような期待を寄せていますか?

古村伸宏さん

「40年、協同労働を続けて実感しているのは、主体的な働き方というのは、働く仲間同士がお互いのよさや個性を認めたり、見いだし合ったりしながら働く中で育つということです。それは、現代に即していうと、人間性を取り戻す働き方と言ったほうがいいかもしれません。これが協同労働の一番大事な部分だと思います。

多様なコミュニティーが社会の中にありますが、その一方で、職場がどんどんコミュニティーではなくなり始めてきた。そこをもう1度、新しいコミュニティーに作り直す。そうした役割が、協同労働にはあるんじゃないかというふうに思っています。

雇っている側も雇われている側も、協力し合って初めて仕事は成り立つ、そこをはっきりと伝えていきたいです。そうした考えに触れる人が増えれば増えるほど、働き方や経営の仕方すらも、変わっていくんじゃないでしょうか。働いている人を部品のように扱うんじゃなくて、1人1人の持っている個性や人間性を磨き引き出したりすることが経営では重要なんだと気づく人が増えてくれると嬉しいです。」

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