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世界で注目 「プラットフォーム協同組合」とは?

NHK
2021年5月25日 午後6:31 公開

SDGsの目標の一つにも掲げられている「ディーセントワーク(働きがいのある 人間らしい仕事)」。

この働き方を実現するための一つの解決策として、「プラットフォーム協同組合」が世界的に注目されています。

その仕組みとは、労働者やユーザーが民主的に所有や運営するアプリなどを通じ、商品やサービスを提供するというもの。最新のデジタル技術と、協同労働を行う労働者協同組合が得意とする民主的な事業運営を掛け合わせた取り組みで、ギグエコノミーやより広い意味でのプラットフォームエコノミーへの対抗策になりうるとして評価されているんです。

なぜ、このような働き方が生まれ、世界に広まっているのか、運動の提唱者のトレバー・ショルツさんに話を伺いました。ショルツさんはアメリカのニュースクール大学の教授で、10年前からデジタル労働の課題と解決策を研究してきました。これまで、ウーバーなどに代表されるギグワークの研究で著作を発表しています。

※ギグエコノミー=雇用のない単発の業務を請け負う働き方で成り立つ経済活動
※プラットフォームエコノミー=アプリなどを通じたマッチング機能を介し、モノやサービスの取引きが行われる経済活動
※ギグワーク=雇用されることなく単発の業務を請け負う働き方

Q.なぜ、こうした運動を始めようと思ったのですか?

トレバー・ショルツさん

「ギグエコノミーなどに代表されるインターネットを通じた仕事は非常に搾取され、労働法が適応されないことも多く、法律の整備は十分ではありません。

一部のギグワークを提供する企業では、給料の支払いを決定するアルゴリズムが不透明で、来週いくら支払われるのかもよくわからない状態です。しっかりとした労働契約がないからです。そうした働き方でどうやって人生の計画を立てればいいのでしょうか?

研究を深めるにつれ、こうした働き方にとってかわることができる、よりよい働き方を見つけることが、私にとって非常に重要な課題になっていきました。なぜなら、多くの人がインターネットを通じた仕事での搾取を分析し、問題提起まではしているのですが、その状況を変えるための具体的で、即効性のある解決策はほとんど提案できていなかったからです。

私は20年以上の間、アメリカで最大の協同組合であるブルックリンの食品協同組合で、協同労働を行ってきました。人生の大半を協同労働とともに歩んできたのです。ですから、協同労働をインターネットに持ち込むことはとても自然な成り行きだったんです。」

Q.協同労働の利点は何でしょうか?

トレバー・ショルツさん

「協同労働は、国や地域社会、家庭によるセーフティーネットが崩壊し、人々が絶望し、飢えに苦しむようになったときに、常に注目を浴びてきました。協同労働は自助努力と自律性を重視しています。仕事を持たない多くの疎外された人々や不平等が蔓延している中で、これは彼らを助けるのに適したビジネスモデルです。

資本主義はもう以前のようには機能していません。ギグエコノミーに関連する多くの問題の核心は、株主価値を第一に置く企業のあり方です。 一方、協同労働を行う労働者協同組合では、労働者が第一です。利益を上げることではなく、雇用を守ることが主な目的なのです。

協同労働では、仕事を外国にアウトソーシングしたりはしません。立ち上げのときが一番大変なのですが、その後は他のビジネスに比べて倒産しにくい特徴があります。それはリーマンショックのときに明らかになりました。原動力にあるのは、協同労働にある、同僚への友情だと思います。 協同労働を行う団体は、利益を最大化するためではなく、仲間たちの生計を成り立たせるために結びついているからです。スタッフの離職率や欠勤率も低いという特徴があります。これは協同労働が、よい働き方だからこそ可能になっているのではないでしょうか。

アメリカでは、協同労働で働く人の6割が移民の女性です。社会から疎外された人たちが自らを守るために必要不可欠な手段だと思います。」

Q. ITを活用して協同労働を行うことの利点は何でしょうか?

トレバー・ショルツさん

「給料がよくなり、2倍にすることも可能です。なぜなら、お金を巻き上げる中間業者がいないからです。ネットを舞台に事業を展開できるので、実店舗のビジネスほどコストがかかりません。事業を拡大しやすいのです。

さらに、労働者がプラットフォームを所有しているので、労働条件が明確で、働き方も自由にコントロールすることができます。例えば、子育てのために午後から早退することだって、会社と違って気兼ねなくできるわけです。

 このようなことは、主に介護分野、ホームクリーニング、輸送、そして最近では農業分野を中心に、盛んに起こっています。アメリカだけではなく、プラットフォーム協同組合は47カ国以上に存在し、少なくとも500個以上はあります。様々な国の様々な人々が、プラットフォームを活用した協同労働を始めているのです。」

こうして、ITを活用した協同労働の取り組みは世界各地に広がりを見せています。

アメリカ、ニューヨークのホームクリーニングサービス「UP&GO」。もともと個人事業主だった派遣清掃の女性たちが協同労働を始め、受注の窓口をネットで一元管理したことによって、時給が10ドルから25ドルと、2倍以上に増えました。

EUでは、フリーランスの演奏家たちが作った、「Smart.coop」これまで演奏家たちは出演料の支払いを1年後に先延ばしされることも日常茶飯事で、立場の弱さが問題となっていました。しかし、3万人のフリーの演奏家が協同労働の組織を作り、給料の支払窓口やルールを整備したところ、出演料の支払いが1週間で行われるようになり、失業手当も設けることができました。

トレバー・ショルツさん

「これらはほんの一例に過ぎません。GAFAに代わるサービスを、協同労働で作ろうとする人たちがいるのです。彼らが目指しているのは、無数のプラットフォーム協同組合で構成されるコモンウェルスです。協同労働をする人々がデジタルでつながり、独占企業に対抗する、全く新しい世界を作ろうとしています。」

Q.プラットフォーム協同組合という働き方によって目指すものとは?

トレバー・ショルツさん

「経済的正義の実現です。すべての人間は、幸福を追求し、尊厳のある人生を送る権利があります。優れた競争力を持つエリートや技術者だけがよい生活を送れるのは間違っていると思います。まっとうな、尊厳のある生活は、すべての人に可能であるべきです。私は、労働者協同組合やプラットフォーム協同組合に行政の支援が加わることで、このビジョンを推進することができると考えています。

パンデミックが始まってから、プラットフォーム協同組合に非常に多くの人が興味を示しています。私の大学のオンラインコースでは、去年から47カ国、1000人以上の学生にプラットフォーム協同組合の作り方を教えています。このコースは、世界中でプラットフォーム協同組合を作ろうとする人を支援しており、日本のみなさんも利用できます。」

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