「念じるだけで機械を操る」アニメやSFで描かれた世界が現実のものになろうとしています。5月25日に放送されたクローズアップ現代プラス「麻痺(まひ)した手が動いた~リハビリと脳科学 最前線」では脳と機械をつなげることで脳を活性化、医療への応用や、能力を拡張させる最新の研究をご紹介しました。脳で機械を操るとはどんな世界なのか。当番組のナレーターで、国民的アニメ「機動戦士ガンダム」でアムロ・レイ役を演じた声優・古谷徹さんに体験してもらいました。
脳の活動で動く「ミニチュアザク」
今回古谷さんに動かしてもらったのは、脳の活動に応じて動く「ミニチュアザク」。去年、東北大学などが立ち上げたベンチャー企業NeUと、バンダイが共同開発しました。
ザクとご対面した古谷さん。開口一番、一つの疑問を口にしました。
「なんでザクなんですか??」
開発に関わったNeUの星野剛史さんは「ガンダムの世界で、サイコミュ・システムを搭載した最初のモビルスーツ、それがこのザクなんです」と説明しました。
このザクはアニメでは描かれていないため、古谷さんも知らなかったようです。
(※サイコミュ・システム:ガンダムの世界で描かれる、脳波によって機械を制御するシステム)
(NeU 星野剛史さん)
小型の機械を搭載したヘッドバンドを渡された古谷さんは、星野さんから使い方の説明を受けます。
星野さん:これは、脳の血流量を計測する機器です。これを額に装着し、前頭前野の血流量がどの程度上昇しているかをはかることで、脳の活性度合いが分かります。前頭前野の活動が一定以上あがると、ザクが動き出す仕組みです。
古谷さん:どうやって脳活動を活性化させるんですか?
星野さん:頭の中で好きな音楽を早回しで歌ったり、早口言葉を話したり。難しい計算を猛スピードでしたり。
古谷さん:へえ面白いですねえ。でも僕、“オールドタイプ”だからなあ。うまくいくかなあ。それに、ザクですからね。倒す敵ですからね(笑)
この機器はもともと、脳の活動を見ながら鍛える「脳のトレーニング」として開発されました。星野さんはロボットを使うことによって、楽しみながら脳を活性化できるのではないかと考えています。
少し不安そうな古谷さん。アニメのように、脳で動かすことはできるのでしょうか。
古谷さん:ザクなんて動かしたことないけど、やってやるさ。動け、動けよ。
古谷さんが神経を集中すると・・・・・
すぐにザクが反応。歩き出し、そしてパンチを繰り出しました。
古谷さん:こいつ、動くぞ!
星野さん:こんなにすぐに動かせるなんて。やはり、“ニュータイプ”ですね!
星野さんいわく、脳の活動を思うようにコントロールできるようになるためには時間がかかる人が多いとのことです。
古谷さんが語る 脳と機械が繋がる未来
今回、脳活動でロボットを動かす体験をした古谷徹さんに、感想をうかがいました。
―実際にザクを「脳」で動かした感想は?
古谷さん:実は半信半疑だったのですが、実際に念じて何度も動いたので、驚きと共に安堵しました。
―動けと念じていたときは、どんなことを考えていましたか?
古谷さん:脳を活性化させるために、最初は持ち歌の歌詞を思い出していましたが、動くことが分かってからは、ストレートに「歩け!」「撃て!」と念じました。
―開発者も驚くほど、すぐにザクを動かすことができました。古谷さんはやはり“ニュータイプ”ではないかと思ってしまいました。どうですか?
古谷さん:いえいえ、普段は全く空気が読めないので明らかに“オールドタイプ”です(笑)。
―ガンダムの世界で出てきた技術が現実のものになろうとしていますが、どのように思いますか?
古谷さん:脳波によって同時に複数の機械をコントロール出来るようになるとは夢のようです。あらゆる業種で業務の効率化が進むと思います。富野由悠季監督はやはり天才だと改めて思いました。
―この技術もガンダムの世界のように、いわば“ニュータイプ”を生み出すことができる可能性があります。そうした世界についてはどのように思いますか?
古谷さん:ガンダムの世界では“ニュータイプ”は人の革新と言われていますが、これまで使われていなかった脳の部分が使えるようになれば、おそらく生活はさらに便利になり、価値観の違う他人とも分かり合えるようになるかもしれません。それが世界平和に繋がることを心から願います。問題は全人類が同時には“ニュータイプ”になれないであろうということです。“オールドタイプ”との対立や差別、はたまた軍事に利用されるようなことが起こらないとも限りません。それは全人類にとって大いなる不幸です。インターネット誕生の時と同様に技術や情報の公開と共有が不可欠だと思います。