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斎藤佑樹が元チームメートのディレクター(私)に語ったこと|番組未公開インタビュー

NHK
2021年10月19日 午後5:02 公開

10月17日、日本ハム・斎藤佑樹投手が引退しました。

15年前、“ハンカチ王子”として日本中の注目を集めた斎藤選手。そのとき、同じ高校の野球部でエースの座を奪われた私はいま、NHKのディレクターとして働いています。

この1年、私は彼のプロ“最後の日々”を記録してきました。

「お前はなぜ投げ続けるのか」――ボロボロになってなお、自分の可能性を諦めない1人の野球選手の姿を伝えたいと思い、私は彼の言葉を記録してきました。

番組でお伝えした斎藤の言葉はほんの一握りです。等身大の「斎藤佑樹」をもっと知ってもらいたいと思い、彼がインタビューで語ったその時々の言葉を、できる限りお伝えしたいと思います。

(聞き手:クローズアップ現代+ ディレクター 髙屋敷仁)

 

関連番組(放送1週間後まで見逃し配信中)

クローズアップ現代プラス「密着 斎藤佑樹 “ハンカチ王子”最後の日々」(2021/10/19放送)

 

 

「メンタル強いって言われるんですけど」

右:筆者

 

高校時代、早稲田実業のエースだった私。その座を奪ったのが、1年後輩の斎藤投手でした。元チームメートとして、そして一取材者として、私はこれまで折を見て、斎藤投手の言葉を記録してきました。

去年12月、日本ハムの2軍施設である千葉・鎌ケ谷スタジアム。私はオフシーズンを迎えた斎藤にインタビューをしていました。当時、斎藤は右ひじのじん帯を断裂、投手にとって致命傷ともなるけがを再び負っていました。この年、斎藤はプロ入り後初めて1軍での登板が1試合もありませんでしたが、現役続行を決めました。

 

 

――2020年は新型コロナとかもあって、思うようにいかないこともあったかもしれないけど、初めて1軍にいけなかったのは、自分の中で整理できた?

斎藤:

僕の中では1軍に行けなかったのは「そういえばそうだったんだ」って感じだったんです。ずっと1軍にいても活躍できないことが続いていましたし、投げるところもビハインドのところだったので、チームの勝ちに直結する場面ではなかったので。ただ、戦力になれなかったことはとても悔しかったなと改めて思いましたね。

 

 

――そういう中で球団と契約したことは自分の中ではどう受け止めたの?

斎藤:

自分の中でやるべきことは、野球をやることしかないので。ただ球団に対してはちゃんと義理を果たさなくちゃいけないというか、恩返しをしなくちゃいけないと思っているので。ただ、それと自分がやることはまた別なので、「相手が思っているからこうした方がいいだろうな」ってことよりも、自分が野球選手として結果を出すために何をしなくちゃいけないのかを、いま僕は考えるべきだと思うので。

 

――よく、メンタル強いとか言われるけど…

斎藤:

僕の中で勝手なイメージですけど、メンタル強い人って何か言われても、たぶんそれが耳に入らない人だなって思うんです。僕の場合、ちゃんとそういうの耳に入ってきますし、自分の立場もわきまえていますし、立ち位置もわかっているつもりです。

でも僕の場合は、それを自分がやらなくちゃいけないことと、考えてもしょうがないことって、切り分けるようにしています。だから、いまの僕にとってはファイターズが契約してくれた以上は球団に対して、ちゃんと野球をやらないといけませんし、そこで自分の見え方がどうだとか、「本当はこうなのに」と言い訳をすることは絶対しないようにして。自分が今やらなくちゃいけないのは野球で結果を出してファイターズが優勝するために自分も活躍して頑張ること。そのために今だったら早くひじを治すことだと思うので。それ以外のことはあまり考えないようにしています。

メンタル強いって言われるんですけど、そこはそういう思い込みをしているだけなので、決して強くはないです。

  

 ――あえて言うけど、1軍で1回も投げていない中で斎藤の年で契約されたことは客観的に見たら「なんで?」っていう声があると思うんだけど、そこはどう? 

斎藤:

僕もずっと考えていましたけど、僕は野球やりたいです。ファイターズで出来るのが一番嬉しいですし、それが出来なかったとしたら、他でも野球をやりたいと思ったと思います。それがもちろん、世の中的に見て、いわゆる不公平だとか感じるのもわかりますけど、これは僕の個人の意見なんで、僕だけのことを考えていうと、僕はただ野球をしたいだけです。あとは契約してくれるか、してくれないかはファイターズに任せる。それは僕がコントロールできないことなので。

だから「自分から引退しろ」って言われるかもしれないですけど、それは自分の気持ちに対して矛盾しているなって。野球やりたいのに、自分から引退しますって、おかしいじゃないですか。逆に最後まで野球を自分が出来るまではやりたいと思っているので。

 

 

「僕が変わったというよりも、僕を見てくれている人たちの目が変わった」

今年2月のキャンプ。斎藤は右ひじの負担を減らし、球速を出すためのフォーム改造に挑戦していました。連日200球近くの投げ込み自らに課し、新たな練習スタイルでの再起に挑む斎藤。練習後のインタビューでは、入団直後と今とでは自分だけでなく、周りの変化があったことを語りました。

 

――ここ(沖縄・名護でのキャンプ)見て思ったけど、10年前、このキャンプからプロ野球選手になって、その時と今の気持ちの違いとか、今10年経って自分が変わっていることとかある?

斎藤:

一番思うのは、あの頃こうやって自然体でインタビューを受けることはまずなかった。自分を作っていたし、いろいろな感情を押し殺しながらプレーをしていたと思います。「これ言っちゃいけない」とかいろいろ気を使いながらしゃべっていましたけど、いまはあまり気を遣ってないです。

僕が変わったというよりも、僕を見てくれている人たちの目が変わったっていうのが一番じゃないですか。僕が変なことをしゃべったら、きっと髙屋敷さんだったらそんなところ使わないじゃないですか。それって10年かけて「斎藤佑樹」という存在を知ってくれた人たちが作り出してくれているだけだと思うんです。だから僕も自然体でいられるというのはありますね。

 

――キャンプでマー君(田中将大選手)のことはよく聞かれた?

斎藤:

聞かれましたね。

 

――ちょっといらっとした?

斎藤:

全然いらっとしてないです。斎藤佑樹っていう野球選手に対しての周りからの見方と、自分が思っている自分の人生としての生き方と、すごいギャップがあるなって言うのは感じましたね。

マー君のことを取材されて聞かれたときもすごく思いました。「本当はこうなんでしょ?」みたいな雰囲気で聞いてくるんですけど、別にそんなに思い入れもないし、彼が帰ってきたから「よし、もっと頑張るぞ」みたいのはもちろんない。「何を(取材で)言ってほしいですか、全然答えますけど」って感じです。

 

――あの(甲子園での)戦いは一生背負っていくほどのものだったから…。斎藤はギャップがあるって言ったけど、お互い特別な存在ではあるんじゃないの。

斎藤:

客観的に見ても、あの時の甲子園の試合はすごく楽しい試合だったんでしょうし、それが10年経ったから「もう関係ないよ」って言うわけにはいかないし。マスコミの方が聞くのも当然でそれに応えなきゃいけないという義務があるのもわかっています。

僕が生きていく人生ってまた違うので、答えなくちゃいけないのはわかってるんですけど、変なプレッシャーはかけないでほしいです。漫画の主人公のように「もっとこうしなくちゃいけないでしょ」みたいな、“勝手に僕の人生ブランディングされてます”っていうのはちょっとやめてほしいです。

昔はそう感じていましたね。自分もそうしなきゃいけないって思っていました。

 

 

「野球ができるってすごく幸せなこと」

キャンプ中のインタビューで、斎藤は取り組んでいた新しいフォームのことや、大切にしている投球術について私に話してくれました。そして、「野球を続けられること」について、率直な思いを打ち明けました。

 

斎藤:

プロ野球なので、自分が続けたくても続けられない環境ってあるじゃないですか。それとは別に、自分の「野球を続けたい」という気持ちはまた別なので。それが、すごく近づいてきている。

 

――近づいてきているというのは?

斎藤:

こうやって野球をやらせてもらえている以上は、「もっとやりたかったのに」ではないじゃないですか。野球をやれるだけやれている感覚があるし、こんなに現役を長くプロ野球選手としてやれているのは、すごく幸せだなと感じているので、そういう意味ではいつ辞めても悔いを残さないなって思いますね。

  

――もし今年振るわなかったとしても悔いは残らない?

斎藤:

それが笑っているか泣いているかは、その時の感情なのでちょっとわからないんですけど、冷静に考えたら今「クビ」って言われても、悔いは残らないとは思います。

だって、プロ野球で11年もやらせてもらっているんですよ。そんなに結果出てない選手がこんなにやらせてもらえているって、この時点で幸せなことですし、結果をもし出したとしてもプロ野球で11年、そこまで野球ができるってすごく幸せなことだなって思いますね。

 

――斎藤の中の結果っていうか、これができたら自分として本当に丸をつける、みたいなことはあったりするの?

斎藤:

怒られちゃうかもしれないですけどやっぱり1軍で1勝すること。それが1つのボーダーラインかなと思いますね。

 

 

「思い通りに投げている夢をよく見ます」

シーズンが開幕して3か月がたった7月。斎藤は2軍戦のマウンドに立っていました。球速は130キロ前半。斎藤は自らの引き際について複雑な思いを口にする一方、その当時よく見たという夢の話をしてくれました。

 

――シーズンが始まって「引退」への思いは変わってきた?

斎藤:

少なからずよぎったりはします。僕は与えられた状況を全うするしかないですし、そのときが来たら考えないといけない時期が絶対くるので、それまでは自分がやらなくちゃいけないことをやりたい。その時間は本当に限られているので限られた時間を全力でやり抜きたいなと思いますね。

  

――いま、ふと何か考えることはあるの?

斎藤:

最近すごく夢で見るのは、ボールを自由自在に操れる能力が僕に舞い降りてきて、本当、思い通りに投げている夢をよく見ますね。試合で投げています。

今年ずっと見ますね。それだけボールをコントロールできて、自分が思うような結果が出たらめっちゃ楽しいなって、夢から覚めたときには「まあ、それはそうだよな」「そんないい話ないよな」って…。

 

――いままでそういうのあったの?

斎藤:

なかったですね。いままで全くなかったです。なんでなんでしょうね、それは本当にわからないです。

 

――それは高校のときみたいに抑えているときに似ているの?

斎藤:

そういう感じかもしれないです。自分の体がコントロールできて思うような結果が得られて・・・。確かに似ているかもしれないですね。

 

――初めて聞いたけど、面白いね。

斎藤:

ははは、面白いですよね。そんなこと自分だけ出来たら、逆につまらなくなるのかもしれないですけど。でも一回ぐらいはやってみたいですね。

 

 

“いまの斎藤佑樹”に届いたファンレター

この日のインタビューで斎藤が触れたのが、ファンから届く応援のファンレター。“ハンカチ王子”時代を知る世代だけでなく、“いまの斎藤”だけを知る若いファンからも応援が寄せられていると言います。

 

――斎藤の高校時代を知らない人からファンレターが来ているの?

斎藤:

ファンレター本当嬉しいですね。正直言うと、ファンレターがたくさんきていた時って全部見きれないじゃないですか。いま全部見させていただいて、僕が元気もらうような内容が沢山書いてある。それはすごく嬉しいですね。

 

――元気もらえたのはどういう内容で?

斎藤:

「結果は大事なんでしょうけど、頑張っている姿をみて、僕たちも頑張ります」とか、「斎藤選手の応援に行くときが唯一の楽しみなんです」とか、だから「グランドに出てきて頑張っている姿を見るだけでも生き甲斐です」とか…そういう言葉をもらえると、僕が慰められているというか。頑張る活力になりますし、言ってもらえるのは嬉しいです。

  

 

斎藤がファンレターの一部の内容を教えてくれました。

  • 「私は甲子園のことや、入団された頃の斎藤さんを知りませんが、努力されている姿を見て、お手紙を書かせていただきました。辛くなったらすぐ逃げてしまうことが多く、なかなか立ち上がれないので、斎藤さんが立ち上がり続けているのは本当にすごいことだと思います」

 

  • 「いつもがんばっている姿、同年代の人間として尊敬しております。ケガなどで思うように活躍できない姿などを含めて、生きざまをファンとして見させていただいております。斎藤選手のどんな状況でもはいあがる精神、向上心に刺激されます」

 

 

――斎藤の高校時代をリアルタイムで知らない人からも声が届くのって、斎藤が11年プロでやってきているからなのかな。

斎藤:

その時間をもらえていることはすごく幸せですし、長くやっているからこそ、迷惑はもちろんかけますけど、僕がいろいろな人に出会えて、色んな人に支えられているっていうのが改めて感じられているので、それはすごく幸せだなって。

 

 

「一人ひとりのバッターを抑えられる喜びってすごく嬉しい」

シーズン終わりまで残り1か月となった9月上旬。斎藤は肩のけがに苦しみながらも、トレーニングを続けていました。今シーズン中、最後のインタビューとなるはずだったこの日。野球を続けられるかどうか悩みながらも、今の斎藤にとっての野球の“楽しさ”を語ってくれました。

 

――9月入ったけど、今の心境としてはどう?

斎藤:

なんとも言えないです。自分がやるべきことをやって、その上で奇跡が起きないかなって思ってます、なんの奇跡かわからないですけど、なんか奇跡が起きてくれないかなって。奇跡が起きないと1軍で投げられないというのもそうですし、来年野球やるかやらないかというところの決断もしなくちゃいけないですし。

 

――今の段階ではどうなの。自分の中ではもう今年でって感じなのか、まだちょっともう1回やれるんだったら…

斎藤:

やりたいのはやりたいですけど。野球をやりたいけど、結果がでるかもわからない自信の中でやるのは、周りにももちろん申し訳ないですし、自分が一番悔しいですし。肩がよくなって、例えばストレートのスピードが140キロぐらい投げられるんだったら何とか勝負はできるのかなって思うんですけど、体も色々ボロボロだし、いま2軍で投げてるし、これが1軍でバンバン活躍していたら別なんですけど難しいですよね。

 

 

――昔は「2軍で投げても調整だ、1軍にあがるためのものだ」というのがあったけど、いまはファームでも、対バッターに自分の思う球を投げて抑えられたら嬉しいな、楽しいなってなるの?

斎藤:

ありますね。もし今年でプロ野球選手を辞めるってなったら、あと数えられるぐらいしかバッターに投げられないじゃないですか、そうしたら一人ひとりのバッターを抑えられるのってすごく嬉しいですよね。それが1軍であろうが2軍であろうがプロ野球選手ではかわりないし、それがチームの勝利に貢献していると思えればすごく嬉しいことだし。昔はね、ちょっと調子のって「1軍で投げないと意味がないでしょ」って思ってたんですけど、いま2軍で投げて抑えることだけでもほんと嬉しいですよね。

いま僕が1年目に戻ったとしてもまた調子のると思うんですよ、いまみたいな必死さは確実になかったと思うんですよね。でもそれはそれで仕方ないと。その野球人生を経て、いまこうやってバッターを抑える喜びを感じられていることは、いまの僕にとってはすごく幸せなことなので、もしあのとき迷惑かけた人がいたら「ごめんなさい」って感じです。

 

――バッターを抑えるって高校や大学では楽しかったの?

斎藤:

楽しさがちょっと違いますよね、高校とか大学のときって、それこそ調子のった言い方ですけど、抑えられるのが当たり前の状況でどうやって抑えるかが大事というか、三振とったり、自分が試しているボールで空振りとれたりすると、ちょっと嬉しいなって思うし、打たれたら「なんでこんなバッターに打たれるんだ」っていう悔しさがあったんですよ。

いまってどんなバッターを相手にして打ち取ってもすごく嬉しいし、例えば抜け球とか逆球とかで、それがもし見逃し三振とか、空振り三振とか正面ついたライナーでもアウトなら嬉しいし、そこはすごく変わりましたね。

 

 

「自分の頭もそうですけど、気持ちが整理できてない」

9月22日、私は斎藤に呼び出されました。

練習を終えた斎藤と2人きりの場。そこで、「引退をすることになりました」と告白されたのです。

  

――9月の中旬は少し悩んでいたけど、自分の中でそこはどう考えたの?

斎藤:

何でかと言うと肩がすごく痛いから。この間投げた時、肩が本当に上がらなくて「これ無理だなぁ」と思ったんですよね。試合になったら何とか投げられるんですよね。投げられるけど次の日は肩上がらなくなるし今日のキャッチボールもすごく辛かったし。そこが1番大きいですかね。

去年もこの時期にひじをけがして、「来年もやろうと思えばできる」とドクターに言ってもらえて、去年のこの時期には1年で終わりにするって決めて今の時期を迎えて、これがズルズル続いていくと、野球は大好きですけど、どこかで自分の人生の中で区切りを決めないと次に進めないなと思っている時が今日だったので。そればかりは、誰も相談することはできないというか、最後僕が決断しないといけないですしね。

 

――決断してからとなんか違う?

斎藤:

いや、あんまり変わらないですよね。すごく複雑。自分の頭もそうですけど、気持ちが整理できてないっていうか、そもそもこれは整理できるものなのかなって思ったりはしますね。

「次に何かをする」、野球選手って絶対にこの日が来るじゃないですか。僕ももちろん悲しいですけど、悲しいけど絶対くるもんだし。次に何をするかが大事だと思いますし、そこに向かって早く切り替えたほうがいいんだろうなとは思ってますけど。なかなかそういうわけにはいかないですよね。

 

――夏ファームで投げてずっと迷っていたと思うけど、斎藤が決断しなかった理由はなんでだと思う?

斎藤:

心のどこかでまだやれるんじゃないかって言う自分の中での期待がありましたし、まだ本気で140キロ台のボールを投げて1軍で勝てるって本気で期待してたんでそれがあったからだったかもしれないです。

思うように投げれなかったのが1番大きいですね。あと、他のチームメイトを見ていて、他のチームメイトを応援する気持ちが強くなってきたというか、本当はライバルであるチームメイトに対して、本気で頑張ってほしい、活躍してほしいって思ってきたところは選手としての闘争心みたいのがなくなってきてるんだろうなと感じました。

そんな中、けがでマウンドに行って自分の思うような球が投げられない。何とかそんな状態でも投げさせてもらっている、チャンスをもらっていることに歯がゆさを感じたりしていました。

 

  

――いまのところ悔いはない?

斎藤:

細かいこと言ったらキリがないですよ。悔いがないことは無いんですけど、まだそういうつもりでずっとやってきましたし、「いつ辞めても」という覚悟を持ってやっていたので、悔いは無いんですけどね。細かいことを言えばありますね。

やっぱり、けがですよね。けがも一朝一夕で良くなるものでもないですし、僕の場合は突発的なけがというよりも、蓄積でのけがが大きいので。例えばタイムマシンであの時に戻ったからどうなるものでもないでしょうし、そこは何とも言えないですよね。

 

 

「何も持ってないからこそ、良い仲間に恵まれた」

10月17日、斎藤は、札幌ドームで行われたオリックス戦で現役最後のマウンドに上がりました。試合後にはセレモニーが行われ、ファンや関係者が斎藤の11年間の現役生活をねぎらいました。試合終了後、私は斎藤に“最後のインタビュー”をしました。

 

――どう?いま終わって。

斎藤:

あっという間すぎて、もうちょっとゆっくり味わいたかったなぁと思ってます。疲れはありますけど疲れよりもその高揚感というか。

最後、真剣勝負をしてもらって結果的にフォアボールになってしまいましたけど、また最後の勝負を楽しめたっていうのは幸せだったなと思いますね。

 

――俺が見てて斎藤って自分の可能性を諦めないなと、信じ続けているなと。なんでそれができたのかなって。

斎藤:

ちょっとくさいこと言いますけど、夢は見るものじゃなくて叶えるものだと思いますし、甲子園優勝にしても、プロ野球選手になるにしても、小さい頃は夢だったことが現実になった。だから、あきらめないでやり続けていれば絶対にその夢もつかめる時がくるんだなって知ることができたので、この先もそういう思いでやっていきたいですし、そういう思いを伝えていきたいなって思います。

 

――2軍生活が長くて、いろいろ考えることがあったと思うけど、その中で斎藤が見つけたもの、気づいたものって何があるのかな?

斎藤:

目標に向かって頑張らないといけない。それはやり続けないと見えるものも見えてこない――それは栗山監督が教えてくれましたし、やり続けることによって、どうしてもできないことがある。今回、僕もできないことが多かったし、それを達成しなくちゃいけないんですけど、それを達成できなかったとしても、やり続けることによって得られるものはたくさんあったと思います。もしかしたらそれ以上のことが僕は得られたかもしれないですし、自分がやってきた目の前のことを淡々とこなしていくことは大事なのかなと思いましたね。

  

――何か“持ってる”って思った?

斎藤:

いや、何も持ってないからこそ結局、良い仲間に恵まれたなって思いはありますね。

高校大学で結果を残すことができてそのままプロに来て活躍できると思ってきましたけどやっぱりそんなに甘くなかった。ただ、その中から自分が活躍するために見出さなきゃいけないことはたくさん考えましたし、考える過程が僕にとってはこれからの人生にとってきっと大事なんだろうなと感じました。

 

  

取材後記

大学時代の斎藤と私

 

「なぜ斎藤は投げ続けられるのか?」

結果を出せず、周囲からの厳しい声もある中、投げ続けてきた斎藤。

そんな男が引退を決断するとき、何を語るのか――私はこれを記録して伝えないと、後悔すると思い、斎藤の最後の日々を記録しました。

この1年の取材の中で、斎藤は学生時代と変わらず、野球に誠実に向き合う私のよく知る斎藤でした。番組を見た方、そしてこのインタビュー記事を読んだ方にも、そんな“等身大の斎藤佑樹”を感じてもらえたらと思います。

 

 

 

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