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“永世七冠” 羽生善治 が語る “令和の天才”藤井聡太の「成長」

NHK
2021年10月6日 午後3:55 公開

将棋界でただ一人「永世七冠」を達成している“平成の絶対王者”羽生善治九段

今なお誰も超えられない数々の記録を持つ羽生さんの目に、藤井聡太さんの強さはどのようにうつっているのでしょうか。

  

羽生善治さんが出演:10/6放送 クローズアップ現代+「藤井聡太 最強への道」

放送後1週間は見逃し配信もご覧になれます(~10/14まで)

  

 “平成の絶対王者” 今なお誰も超えられない羽生善治の記録とは?

 

史上3人目の中学生棋士として15歳2か月でプロ入りを果たした羽生さん。1989年に初めて挑んだタイトル戦の「竜王戦」を制して、当時の最年少記録となる19歳2か月で自身初タイトルを獲得、25歳のときに、当時の七大タイトルすべてを独占する史上初の「七冠」を成し遂げました。

これまでのタイトル獲得数は歴代1位の「99」、2017年には現在7つある将棋の永世称号の資格をすべて獲得し、前人未到の「永世七冠」を達成しました。

 

 

羽生善治(52歳)と藤井聡太 (19歳) 2人の関係は?

 

2人の対局が初めて実現したのは藤井さんがプロ入りした翌年、2017年4月にインターネットテレビで配信された非公式戦でした。結果は藤井さんの白星。プロ入り間もない中学生がトップ棋士を破るという衝撃的な結果になりました。

公式戦で2人の初対局が実現したのが、その1年後の2018年2月「朝日杯将棋オープン戦」の準決勝。この時も藤井さんが、「永世七冠」を成し遂げたばかりの羽生さんを破り、決勝も制して史上最年少で優勝を果たしました。その年、羽生さんはただ1つ保持していた「竜王」のタイトルを失って、27年ぶりに無冠となります。

そして去年9月の王将戦の挑戦者決定リーグの対局では、当時二冠だった藤井さんが羽生さんを相手に上座に座り、世代交代を印象づける形となりました。しかしこの対局で藤井さんは、羽生さんに力を見せつけられ、初めての黒星となりました。

 

 

「欠点が見当たらない」 羽生善治九段が見る藤井聡太の“成長”

2021年10月7日放送「クローズアップ現代+」で羽生善治さんにインタビュー

 

――30年以上にわたって、将棋界の第一線に立ち続ける羽生さんの目に、藤井さんの今の強さはどのようにうつっているのでしょうか。

 

羽生さん:

藤井さんは14歳でデビューをされて、本当に順調に着実に棋士としての実績を上げられているなと。もちろん勝率ですとか結果も素晴らしいものがありますし、内容的なものも、その時その時の課題というかテーマみたいなものがあって、前進しているなという印象を持っています。

1回目の緊急事態宣言があったころ、その間も研さんを積まれて実力を磨いていたんではないかなと、解除されたあとに再開された対局の棋譜を見て思いました。

一局一局、すべての棋士たちがどんな将棋を指すか注目を集めていますし、定跡の最新型、最先端のかたちというのを提示しているところもあります。細かいところで色々と小さな工夫を毎回されているので、非常に見ていて興味深いというか、勉強になります。

 

 

――藤井さんの将棋は、どこが、どのように強いのでしょうか。

 

羽生さん:

まず1つは序盤の研究の深さといいますか、藤井さんはある程度、指す戦法というのを決めている印象があるんですね。そこを深掘りして、悪くならないように、あるいは主導権が握れるような深い分析みたいなものがあるところ。

中盤戦は「読み」というか、1つ1つ丁寧にこつこつと読んでいって、きちんと精度の高い手が指せるというところがある。終盤戦は、これはもう詰将棋を解くことでは10代の前半のころから高い評価と評判を得ていましたので、やっぱり強さなのかなと思っています。

全体的に非常にミスが少ない、明らかな弱点というか、欠点が見当たらないというところが、強い秘訣(ひけつ)なのかなとは思います。経験値の部分では、まだ少ない部分もあるんですけれども、自分があまり見たことのない局面でも対応力というか、適応力みたいなものが高いからこそ、こういう結果を残しているのかなとは思っています。  

――なにか変化を感じる点はありますか。

 

羽生さん:

藤井さんがデビューしたころ、先手番は「角換わり」という作戦を得意にしていて、この作戦はもう何十年も前から指され続けていて、定跡も体系化されているし、場合によってはもう詰みのところまで研究されているんですけど、最近指されているのは「相掛かり」という作戦で、こちらも長い歴史はあるんですけれども、まだセオリーが確立されていない戦型で、そちらを最近はよく指されています。

心境の変化か、自分自身の興味というかテーマみたいなものが、変わってきているのかなという印象は受けています。その時、その時に、自分なりに変化していくという強さもあるんじゃないかなと見ています。

  

――それらの強さはどのように磨かれていると思われますか。

 

羽生さん:

棋譜を見ていて、結構早い段階で持ち時間をかなり使ってしまって中盤の入り口のところでもう時間がないケースも多いです。そこは自分なりに納得して手を選んでいきたいという姿勢もあるのかなとは思っています。

例えば、王位戦は2日制で持ち時間は8時間でしたけれども、どの対局もほぼほぼ持ち時間全部を使って、対局しているなかで思考や判断の精度を上げているんじゃないかなと思います。それはある種、すごく真摯(しんし)に1つ1つの対局に向き合っている証しではないかなと思います。

 

――藤井さんは「王位戦」「叡王戦」で、最大のライバルとされる豊島将之さんと対局しました。10月からは「竜王戦」が始まりますが、2人の対局をどのようにご覧になっていますか。

 

羽生さん:

遅かれ早かれ、実現するカードだとは思っていたので、ついに2人が大きな舞台で対局するということになったのかなと。

豊島さんも非常に序盤研究の深い棋士で、作戦の立て方とか、分析力も高い評価のある棋士なので、その2人が対戦するとどういう将棋になるのかなというのは、非常に注目していましたし、実際、期待にたがわぬ高度な内容の将棋を指していたと思います。

すごく細かいところまで事前に考えていたり、研究していたりというところは棋譜の端々からも感じられましたし、そういう前例から離れたあとも、本当にきめ細かいところまで読んでいるんだなというのは感じました。

2人で今の最高峰・最先端の将棋を見せてほしいなと思っています。

 

 

――藤井さんの存在は羽生さんやトップ棋士の方々にどのような影響を与えているでしょうか。

 

羽生さん:

作戦的な面でいろいろな新手とか、アイデアとかを披露しているので、それに影響を受けて研究や分析が進んでいく面もあります。あとは手を選ぶ感覚みたいなところが、他の棋士とちょっと違うところがあるので、そこはどういうものなのか考えていくことは、自然と増えるんじゃないかなと思っています。

 

――羽生さんの達成された「七冠」に、藤井さんは最も近い棋士ではないかとも言われています。どのようにお感じになっていますか。

 

羽生さん:

今の将棋界においては、タイトルを1つ取るのも、1つ勝つのも非常に大変な難しい時代です。藤井さんといえども、一局一局みんな圧勝というわけではないので、接戦というか熱戦が続いている中でやっていっています。そのあたりでどういう将棋、どういう内容、どういうレベルの将棋を指し続けていくかにかかっているのかなとは思います。どうなるかは、なかなかよくわからないというのが率直な実感です。

自然な目で、という言い方は変ですけど、どういうふうになっていくのかなというのは常に興味と関心を持ちつつ、見ていきたいなと思っています。

 

 

  

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