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災害ケースマネジメントとは?

NHK
2021年7月13日 午後1:00 公開

「在宅被災者」と「災害ケースマネジメント」

「在宅被災者」という言葉をご存じですか?災害で壊れた家が直せないまま暮らしている人たちのことをそう呼びます。東日本大震災のあと初めてその存在が明らかになった被災形態で、現行の災害法制度の隙間に陥り、復興から取り残された人たちです。発生する構造上の理由から、どんな災害でも生まれる可能性が指摘され、震災以降の各地の災害でも次々とその存在が確認されるようになりました。そしてその法制度の隙間を埋めるために支援者たちがたどりついたのが「災害ケースマネジメント」と呼ばれる新しい支援の仕組みでした。今では在宅被災者に限らず、様々な理由で生活再建が遅れている人たちの力にもなると考えられるようになり、限界が露呈している今の法制度に変わる新しい被災者支援制度の柱になると期待されています。    

災害のたびに生まれる「在宅被災者」

在宅被災者とは「災害発生時に何らかの事情で避難所に行かず、その後、壊れた自宅などで避難生活を送っている人」。NHKでは災害復興の専門家などと協議の上、そう定義しています。災害が起きると避難所が開設されます。しかし、壊れた家でも生活空間が残っていれば、避難所がいっぱいで入れない、病気や怪我で劣悪な避難所では暮らせないなど様々な理由で自宅に留まる人は多くいます。自治体の支援も避難所が中心になりがちで、実態把握も難しいため一度行政の目からこぼれると、物資や情報など支援の流れから取り残される危険性が高いと考えられています。

また、支援制度は家が残った人には自助努力を求める構造になっており、東日本大震災の被災地では、10年が過ぎた今でも壊れたままの家で暮らし続ける人がいます。宮城県石巻市が2019年に行った大規模調査からは、2400世帯が家を直したくても直せないままでいることが判明しました。東日本大震災に限らず、家の破損が起きる災害では高い頻度で発生する在宅被災者は、西日本豪雨や台風19号水害、去年7月の豪雨災害などでも数多く確認されています。

ではなぜその人たちが、長期にわたって「在宅被災者」であり続けることになるのでしょう。

現行法制度の限界 ~家を失った人・残った人の格差~

今の支援制度では、被災者の被災の度合いを量る基準が、家の壊れ方を示す「罹災(りさい)判定」に大きく偏っています。家をなくした人には比較的手厚く、家が残った人には自助努力を求めるという構造です。

家を失った人には、仮設住宅が無償供与され、さらに行政が災害公営住宅を建設して入居するという道が用意されます。一方、家が残った人には、修理のための補助金が最大259万5千円支給されるという仕組みになっています。家が残った人は、そのお金で家を直しきれなくても、それ以上の支援はなく、あとは自助努力でなんとかするしかありません。しかし近年の少子高齢化や経済格差の拡大などで、高い収入や貯金、家族の支えがない人は、壊れたままの家で暮らし続けるしかなくなってしまうのです。

経済が右肩上がりでなくなり、家族や地域が力のない人を包み込み支える力がなくなってしまった今、国も災害に遭った人の支援の大きさを一律に家の壊れ方で決めるのではなく、その人がなぜ壊れた家が直せずにいるのか、なぜそのお金がないのか、どうしたらその人はそこから抜け出すことができるのかを、きめ細かく見てゆく必要に迫られています。そこに登場したのが「災害ケースマネジメント」という新しい支援の考え方でした。

「災害ケースマネジメント」とは?

被災者は家を失っただけでなく、仕事などの収入や健康面でも直接・間接的に被害を被っています。さらに以前から抱えていた問題をギリギリのところで持ちこたえていたものの、災害によってそれが破綻し困難な状況に陥っている人も少なくありません。しかし現在の被災者支援制度はそうした被災者の個別の課題について支援できません。

そこで、被災者ひとりひとりが抱える個別の課題に寄り添って解決を探ろうというのが、「災害ケースマネジメント」です。積極的な訪問で被災者一人一人の状態を把握し、支援が必要な人を見つけ出し、その人に対しては個々の事情に合わせ様々な分野のプロフェッショナルが参加し個別の生活再建計画を立てます。そして最終的には平時の既存の福祉や社会保障制度などへと軟着陸させてゆくというものです。

2005年のアメリカ・ニューオリンズ市のハリケーン・カトリーナでの災害復興で用いられたのが始まりとされ、日本では、東日本大震災において自然発生的に日本版が生まれたと言われています。震災直後から数年の間に、宮城県石巻市の支援団体「チーム王冠」の在宅被災者支援や、仙台市や大船渡市での仮設住宅入居者への支援などで活用され、一定の成果を挙げたことが評価されました。その後、熊本地震、鳥取県中部地震、西日本豪雨など、災害のたびに全国に広がっています。2020年3月には総務省行政評価局の制度検証でも今後検討すべき支援の形として災害ケースマネジメントの個別支援のあり方に触れています。

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