“事故物件” とは?賃貸で「告知義務は3年」のルール化も

NHK
2021年10月5日 午後8:50 公開

“事故物件”。

家を探すとき、気になる人も多いのでは。

でも実は、その定義や告知の運用基準はあいまいなんです。

実際、事故物件ってどんなもの?告知はどんな風にされるの?

現在策定が進む“ガイドライン”など(2021年10月8日に正式に策定)、最新事情も含めまとめました。                              

(事故物件・取材班)

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不動産業界では「心理的瑕疵(かし)物件」と呼ばれる事故物件。瑕疵(かし)とは聞き慣れない言葉ですが“欠陥”といった意味です。

 

例えば「物理的瑕疵物件」とは、

・雨漏りする  

・シロアリ被害がある

・耐震性能が不足している

など、建物の物理的な問題等を指します。

 

それに対し「心理的瑕疵物件」とは、

・過去に殺人事件が起きた

・住民が自殺した

・孤独死して長期間経過していた

といった、人の死などの“嫌悪すべき歴史的背景がある”とき該当するとされます。

 

こうした情報は、[買主・借主]にとって契約するかの判断に重要な影響を及ぼす可能性があり、[売り主・貸主]は把握する事実を告知する必要があります。

書類やチラシ等には「告知事項あり」「容認事項あり」「瑕疵物件」「訳あり物件」などと書かれています。

しかし、前の住人の“死の情報”をどれほど気にするか、取引に影響するかは人それぞれ。そのため[売り主・貸主]にとっても“どこまで告知すべきか”の判断が分かれ、トラブルの原因となってきました。

事故物件をめぐる裁判例を調査してきた宮崎裕二弁護士によると、把握する範囲で不動産の“心理的瑕疵”が問われた最も古い裁判は59年前。「事故物件」という言葉が使われ始めたのは30年前の平成の始めごろだと言います。

  

宮崎裕二弁護士

「平成の初期はバブルで物件価格が高騰しました。

 しかしその反動で、何か事故やトラブルが起きて不動産が“傷もの”になれば、

 資産価値が極端に下がることも起きていました。

 そうした風潮が“事故物件”という言葉を生み出したのかもしれません」

今年5月、国土交通省は事故物件に関する初めてのガイドライン案を示しました。現地点の内容をまとめたものが上の表です。この秋にも正式に発表されるのではないかと見られています2021年10月8日に正式に策定)。

ガイドラインはこれまでの民事裁判の判例などを参考に議論されてきました。例えば、

・住み心地の良さへの影響は自死等の後に第三者である別の賃借人が居住した事実によって希薄化すると考えられるとされる事例

・賃貸住宅の賃室において自死が起きた後には、賃貸不可期間が1年、賃料に影響が出る期間が2年あると判断されている事例

こうした数々の判例を参考にまとめられました。なお、このガイドラインに強制力はないということです。

実はこちらも事故物件

そもそも事故物件と聞いて、どんなイメージを持つでしょうか。

上の写真は、ある不動産業者が売り出している事故物件です。川崎市の閑静な住宅街にある2LDKのマンション。フルリノベーションが施され、販売価格は1180万円。業者によれば、この価格は相場より2割ほど安いといいます。前の住人がベッドの上で孤独死していたことを考慮し価格を設定しています。

この業者によれば、事故物件の不動産価格は

・孤独死で1割

・自殺で3割

・他殺で5割

相場に比べて落ちると言います。

こうした不動産価値の下落を気にして大家は事故物件化を避けたいわけですが、一方では安さを生かしたビジネスも広がりを見せているのです。

専門家によると、“事故物件”は日本独特の問題で、欧米で気にされることはほとんどないと言います。もともと古い建物が多いため、人の死があった物件が珍しくないためです。

高齢化とともに多くの人が死ぬ“多死社会”が到来している現代。“事故物件”との向き合い方を問い直すときがきていると、取材を通して感じました。

  

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