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無罪を訴え続ける林眞須美死刑囚 再審の経緯と争点は

NHK
2021年7月16日 午後2:12 公開

 和歌山毒物カレー事件の裁判は10年にも及び、1000点を超える状況証拠が審理されたのち、2009年5月に最高裁判所で死刑が確定しました。

 しかし、犯行を直接裏付ける物的証拠がなく、状況証拠を積み重ね、有罪が認定されたことや、動機も解明されていないことなどから、林死刑囚は引き続き無罪を主張して再審=裁判のやり直しを求めています。

争点①:ヒ素の鑑定方法

 再審請求の中で最も重要な争点になっているのは、有罪の決め手とされた「ヒ素の鑑定」の正確性です。

 事件現場から検出されたヒ素と林死刑囚の自宅などにあったヒ素が同じだとする鑑定は、当時最先端だった「スプリング8」と呼ばれる分析装置が使われたことで注目を集めました。

 しかし、林死刑囚の弁護団が材料工学に詳しい京都大学の教授に改めてデータの分析を依頼した結果、それぞれのヒ素に混ざっていた不純物などが違い、由来が異なることがわかったとして、この鑑定結果を新たな証拠として裁判所に意見書を提出。さらに、警察側の鑑定書には違うヒ素だとわからないようにデータの数値を変えるなど意図的なごまかしがあったと主張しています。

 2017年3月、和歌山地方裁判所は「ヒ素の組成上の特徴が一致しているという事実は、すべての証拠を検討してもなお認められる」として訴えを棄却。林死刑囚はこの決定を不服として大阪高等裁判所に抗告しましたが、2020年3月、大阪高裁も「自宅にあったヒ素が犯行に使われたとするもとの鑑定結果の推認力が、新証拠によって弱まったとしてもその程度は限定的だ。新旧の証拠を総合して検討しても、判決確定の事実認定に合理的な疑いが生じる余地はない」として、再審を認めない決定を出しました。

 林死刑囚はその後、最高裁判所に特別抗告を行いました。

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争点②:死因に関わる証拠

 さらに林死刑囚は今年5月、「第三者の犯行である証拠が見つかった」として、新たに和歌山地裁に再審請求を行いました。

 林死刑囚の代理人の弁護士は記者会見で、カレーを食べた全員からヒ素のほかに青酸化合物も検出されていたという鑑定結果などを挙げ、裁判で死因に関わる証拠が十分に審理されていないと指摘。「ヒ素ではなく青酸化合物が死因だった場合、林死刑囚は無罪だ」と主張しています。

再審請求中でも死刑は執行されるのか?

 法務省によると、7月11日現在、死刑が確定している死刑囚112人のうち64人が再審請求をしています。

 再審請求自体に刑の執行を止める効力はないものの、2017年以前には、法務省は再審請求中の死刑囚の執行を避ける傾向にありました。しかし、2017年7月、18年ぶりに再審請求中の死刑囚の刑を執行。その翌年に死刑が執行された13人のオウム真理教元幹部も、うち10人は再審請求中でした。執行後の会見で、上川陽子法相は「再審請求をしているから死刑執行をしないという考え方はとっていない」と答えています。

再審請求と死刑執行をめぐっては、「死刑執行を引き延ばすだけの実質的な意味のない再審請求の繰り返しを避けるためにも再審請求中でも執行すべきだ」という意見がある一方、「死刑が執行された後に再審が認められる可能性も否定できない以上、再審請求中の死刑執行は避けるべきだ」という指摘もあります。

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