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「友達や家族とも会えず…」 新型コロナ重症者病棟 看護師が語る本音

NHK
2021年9月17日 午後6:40 公開

このコロナ禍で、離職や転職をした医療従事者は少なくありません。日本看護協会によると2020年の正規雇用看護職員の離職率は11.5%(前年度比 0.8%増)、新卒採用者の離職率は、8.6%(前年度比 0.8%増)と増加傾向にあります。

彼ら彼女らは、コロナ禍でどのような苦悩の日々を送ってきたのか。聖マリアンナ医科大学病院の新型コロナ重症者病棟で1年半にわたり最前線に立ち続けてきた看護副師長の長屋文子さんに胸の内を聞きました。

(報道局 社会番組部 チーフディレクター 松井大倫)

不安と恐怖の中で…「看護とは何か」苦悩する看護師たち

聖マリアンナ医科大学病院 看護副師長 長屋文子さ

 

“私たちは昨年の2月11日からコロナ診療を1度も途切れることなく続けています。第1波では、未知の感染症への恐怖から始まり、毎日自分が感染していないか、恐怖と不安を抱えていました。自分が感染すると、この救命センターの機能を破綻させてしまうというプレッシャーもありました。一方、重症患者さんの経過が快方に向かうことで看護のやりがいを感じた事も多々ありました。

 

しかし、不幸な転帰を辿る患者さんも多く、通常の医療や看護で当たり前に行っていた面会や最期の時間を家族で過ごしてもらうことが、感染対策などの理由でできないことに悔しさや無力さを感じていました。

 

そうした中、「お一人お一人に尊厳を持って対応したい。看取りになったとしても、ご家族がこの先の人生を歩んでいく力がもてるような看護がしたい」と考え、手探りではありましたが、家族支援チームを立ち上げました”

 

タブレットを使用した動画面会(撮影 聖マリアンナ医科大学病院)

 

“救命センターの医師、集中治療領域の特別な学習を受けた看護師(診療看護師や認定看護師)や経験豊かな看護師、日頃から死を迎える可能性が高い患者さんやご家族とコミュニケーションを図る移植コーディネーター、ソーシャルワーカーでチームを構成しました。ご家族には定期的に電話連絡し、ご家族の心身の状況を伺いながら、患者さんの状態を説明し、希望がある際は来院して頂き、タブレットを使用した動画面会を行いました。

 

第3波になるころには、病棟スタッフもCOVID-19の対応力が備わってきたため、ご家族対応は病棟看護師で担えるようになりました。一方、死期が近い患者さんとご家族が病室で面会できるようなシステムを構築するという新たな課題にも取り組み始めました。

 

私は、この直接面会は患者さんやご家族にとって絶対に必要だという思いでしたが、「本当に家族に感染させないか」と最初は不安で足がすくむような思いでもありました。しかし、救命センターのスタッフからはこれまで1人の感染者も出ていないことから、家族に感染させないシステムの修正・検討を繰り返し行いました。

 

ご家族には、医療者と同じ感染防護具を装着してもらう必要があります。自分自身はスムーズに着脱できても、医療者でない他者に防護具を着脱させることは思ったよりも難しく、対応できるスタッフにレクチャーも行いました。そして、面会するまで、ご家族と様々な話をする機会をもち、そのご家族の背景や思いなどに触れることで、患者さんの命の尊さやその人らしさに改めて触れる機会となりました”

 

防護服を装着しての“最後のお別れ”(撮影 聖マリアンナ医科大学病院)

 

“今まで何度も面会に立ち会いましたが、防護具を装着していたとしても、ご家族と患者さんの時間は非常に有意義なものだと強く感じています。入院から面会日まで、ずっと抱えてこられた感情が、一気にあふれるように出てくる家族が多いのです。その光景を見て、手袋越しであっても、ご自身の手で患者さんに触れ、ご自身の言葉でお別れが言えるという通常では当たり前のことがようやくできる体制になったなと思いました。

 

さらに、ご家族が面会後に「自分の言葉で伝えられなかったら、一生後悔の気持ちを背負って生きなければいけなかったと思う」と話されたことがあります。この言葉を聞き、この直接面会へのチャレンジは決して間違っていなかったことを確信しました。

 

また面会を行うことで、ご家族への支援が出来ているという看護師の実感にもつながり、モチベーションが高まったと感じます。看護師の心身は疲労困憊でしたが、コロナ禍にもかかわらず、一定の充実感を得て看護を行ってきました。第3波では、17床の病床をギリギリまで使用しましたが、緊急事態宣言の成果もあり、それ以上の感染爆発を起こすことはありませんでした”

 

 

本音は患者さんに寄り添いたい…第5波での厳しい現実 

 

“第5波になると一転して感染爆発が起こり、8月には100名を超える重症患者の入院やECMOの導入も多い時で5台と、考えられない数のCOVID-19入院患者が押し寄せてくることになりました。救急患者は断らないというポリシーの中、通常のICUと別病棟を重症COVID-19用のICUに改修し、全体で34床のCOVID-19重症病床を院内で設けました。この病床数でも、ピーク時は患者の受け入れを断らないといけないことも時折ありました。

 

これまで以上に看護師は日々の業務に追われる毎日となりました。もっと患者さんに寄り添いたい、洗髪をしてあげたい、伸びた爪を切ってあげたい、汚れたシーツを替えたい、一緒にリハビリをしたい、患者さんをより良くするための知識もケア方法も知っているのに忙しさで思うように出来ない日々…”

 

  

“看護師は、どの職種よりも一番ベッドサイドで患者さんと接しているため、何時間も感染防護具を装着して走り回ることになります。防護具を脱ぐと、スクラブ(白衣)の色が変わるほど汗もかき、私自身も心身共に悲鳴をあげそうに何度もなりました。モチベーションに繋がっていた直接面会も一時、中断せざる終えない状況にもなりました。

快方に向かう兆しがある患者さんはすぐに転院し、その30分後にはまた重症患者さんが入院してくるという日々になりました。患者さんが車椅子に乗る姿すら見届けられないことで看護の達成感を感じられず、そして息つく間もなく、次の重症患者の対応…と看護師は勤務が終わると疲れ果てています。第5波では、若い方で助からない方もおられ、COVID-19の怖さも改めて感じました。

そして、この状態がいつまで続くのか…終わりが見えないことへ心も体も持ちこたえられるのか不安はあります。私だけでなく他の仲間も燃え尽きてしまうのではないかと考えてしまいます。でも何とか心身を奮い立たせて、1人でも多くの人の命を救うために、現場に立ち続けています”

  

 

看護師たちの“終わりなき闘い”

 

看護師のみなさんがコロナ患者の病室に入るときは、PPEという感染を防ぐ防護服を着て手袋、医療用の特殊なN95マスク、キャップを着用します。その作業を毎日、何度も繰り返します。

休憩時間も感染リスクが高くなるからという理由で、食事をするときは黙食、無駄な会話は原則禁止、仕事のちょっとした相談すらまともにできなかったという看護師も多くいます。和気あいあいとしていた休憩室は、一気に閉鎖的な空間になってしまったと嘆く人もいました。

 

長屋さんは、「みんな同じ気持ちだから自分だけ弱音は吐けない。友達とも家族とも会えずストレス発散も難しいが気を緩めれば感染してしまうかもしれない」と我慢の日々を過ごしています。それでも今は、看護師としての15年以上の知識と経験を最大限に活かす時と考え、仲間と共に日々の看護を全うしたいとも話していました。

 

 

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