監修: 東京大学 汐見稔幸(教育学・教育人間学・育児学) 東京大学 大学院 遠藤利彦(発達心理学)
【ねらい】
ともだちの話を聴くことの大切さとその方法を学ぶ。
・ともだちの主張と自分の主張が違うときには、相手の主張を納得できるまで聴いてみよう。
・話を聴くことで、良い人間関係を築こう。
・ともだちの思いを理解する喜びを知ろう。
東京大学 汐見稔幸さんからのメッセージ
■話を「聴く」ってすごい
みー:あれ?これでおしまい?
ひー:おしまい。
みー:山が白いって変じゃない?みーが渡した緑のクレヨン使ってよ!
ひー:緑は使わないよ。
みー:なんでよ!山って言ったら緑でしょ!!
ひー:いや、これでいいんだ。
みー:よくないって!
今回のエピソードでは、山は緑色で描くべきだと考えたみーがせっかく緑のクレヨンを渡したのに、ひーがそれを使おうとしなかったことからイザコザが起きてしまいましたね。この時期のこどもたちは意見がかみ合わないことが起きると、お互いに「相手のことを説得したい」「支配したい」と思ってしまい、平行線をたどることが多いものです。
そんな時にぜひおすすめしたいのが、“ともだちの話をしっかりと聴く”ことです。聴くことに意識を向けると、「相手を大切にすること」や「よい人間関係を築くこと」につながりますし、自分と違う考え方やものの見方に気づくこともできて「自己理解」を深められます。そして何より、自分がまず聴く姿勢を見せることで、相手に自分の意見を聴いてもらう機会も得やすくなるんですね。
■おとなが「聴き方」をアドバイス
おじさん:確かに山を描くなら、色んな緑で描いた方が良さそうだな。
みー:でしょ?!なのにひーったら、緑で塗ってくれないんだよ!
おじさん:でもさ、ひーにも何か、色を塗らない理由があるのかもしれないよ。
みー:ないと思うよ。たぶん、途中でめんどくさくなっただけだよ。
おじさん:それは聞いてみないとわからないよ。 自分の意見はグッと我慢して、ひとまずひーの思いを聞いてみたら?
とはいえ、みーぐらいの年齢のこどもだけでお互いの意図を確かめ合うのはなかなか難しいので、まずは、この回に登場したおじさんのように、おとなのみなさんからお子さんたちに「聴くこと」を促してあげましょう。
ポイントとしては、まずお子さんの考えに理解を示して受け止めた上で、
・自分が主張したい気持ちをがまんしよう。
・なぜともだちはそう思うのか、ともだちの意図を優しくたずねてみよう。
・自分が「なるほど」と思えるまで聴いてみよう。
とアドバイスをしてはどうでしょうか。「最初はうまくいかなくてもやってみよう」と、誘ってみるとよいと思います。
■「分かり合えた喜び」を積み重ねていこう
ひー:ひーは、雪が残ってる山が描きたかったんだ。
みー:なるほどー!!!
ひー:わかってくれた?
みー:うん、100%わかったよ!とってもいいアイディアだね!!
ひー:でしょ?!ありがとう!!
こどもたちも、相手の話を聴いてしっかりと理解できたときにはとてもうれしいものです。人の話を聴くことはおとなでも難しいときがありますから、お子さんと一緒に、「どんなふうに聴かれたら話しづらいかな?」「どんな聴かれ方をすると話しやすいかな?」「どうしたら気持ちをリラックスできるかな?」と、話し合ってみるのもよいですし、お子さんと話を聴き合ってみるのもよいでしょう。そして、お子さんがともだちと理解しあえたときの喜びを、少しずつ積み重ねていっていただけたらと思います。