監修: 東京大学 汐見稔幸(教育学・教育人間学・育児学) 大妻女子大学 田中俊之(ジェンダー論・男性学) 協力: 東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センター 飯野由里子(フェミニズム研究・障がい学)
【ねらい】 人によってさまざまな「ふつう」があり、どれもすてきだということを知ろう。
東京大学 汐見稔幸さんからのメッセージ
今回のテーマは「ふつう」。物語では、みーが探検隊になって「ふつうのパパ」を探しに行きます。「ふつう」という言葉はとても便利でよく使う人も多いと思います。でも、「ふつう」って一体何なのでしょうか。
■「ふつう」は人それぞれ
ひー:みーのパパは毎日走っててちょっと変わってるよね みー:えーうちのパパが? そんなことないよ。どこにでもいる、ふつうのパパでしょ ひー:そうかなぁ。うちのパパの方が、ふつうだよ みー:うーん…本当のふつうのパパはどっちなんだろう? みーのパパの方がふつうだと思うんだけどな…
みーはひーと話すうちに、ひーのパパが料理をしないことを知り、毎日料理をするみーのパパがふつうなのだと思います。一方、ひーは毎日走るみーのパパを「ちょっと変わってるね」と思っていることがわかります。とても仲良しのみーとひーでも、それぞれが思う「ふつう」は違うのですね。
未就学児期は家や幼稚園、保育園での生活が一日の大半をしめ、他の生活様式にふれる経験がまだほとんどないこどもが多いのではないかと思います。そうなると、自然と「じぶんの暮らす家のやり方」が「ふつう」の基準になってくることが多いです。幼い頃、友達や祖父母の家に泊りに行くと、その家に応じた生活スタイルがあり、自分の家と異なることにずいぶん驚いたという人もいるのではないでしょうか。「ふつう」は慣れたものであることが多く、判断する人によって定義が異なります。そうした違いを幼い頃に体験し、どれもそれぞれの家庭のスタイルなんだ!と知ることで、一段階認知の世界が広がるのですね。もし、日常の会話でこどもが「ふつう○○だ!」と言うときは、一緒に根本に立ち返って「ふつう」という言葉でさしていることは何なのか中身を聞いてみたり、「ふつう」という言葉を考えるきっかけにしてみるのもいいかもしれませんね。
■多様な「ふつう」で世界を広げて
みー:いま、ふつうのパパを探してるんであります! ムッシー:うちはおじいちゃんがパパの代わりだから、 おじいちゃんだけど、パパなんだ。それがうちのふつうだよ! あ、テントウムシだ!じゃあ、まったなー みー:バイバーイ!なるほど!そういうふつうもあるのか みーのパパも、ひーのパパも、たろさんも、しーのパパも、 ムッシ―のおじいちゃんもみーんな違うけど、みーんな面白かったな! ふつうは1つじゃなくて、みんなの数だけあるんだな!
子育てをしていると、ついふつうや平均値を探してしまう人もいるかもしれませんが、一人ひとり違うことこそが個性であり大事にしたいことです。こどもは先入観がないぶん、多様な人や家族がいる環境で育つことで、「良い」「悪い」「優れている」「遅れている」といった価値判断ではなく「横並びに面白い!」と、平等感や多様性に対するのびのびとした感受性が育っていきます。
みーが最後に「『ふつう』」は1つじゃなくて、みんなの数だけあるんだな!」と気づいたように、ぜひおとなもこどもも「違うことこそ『ふつう』」と考え、世界を広げていってほしいと思います。
・今回登場した『パパ』たち
みーのパパ
ひーのパパ
たろさん
しーのパパ
ムッシ―のおじいちゃん