「みんながたのしいルールって どんなルール?」

NHK
2023年7月25日 午前8:00 公開

監修: 東京大学 汐見稔幸 (教育学・教育人間学・育児学) 和光小学校・和光幼稚園 北山ひと美 (性教育) 東京大学 藤原清香 (リハビリテーション医学・小児義肢)

【ねらい】
遊びは、みんなが楽しく遊べることが大事。そのためにルールを作りかえることもできる。 どんなルールだったらみんなが楽しいか、それぞれの気持ちを考え、話し合ってみよう。

東京大学 汐見稔幸さんからのメッセージ

ルールと言えば、交通ルールや公共の場でのマナーなど社会的なルールを思い浮かべるかもしれません。これは日々子ども達に“守る”よう伝えていることだと思います。他にも、家庭での約束事や友達との遊びのルールなど子どもにとって身近なルールもありますね。ルールは社会や集団生活に気持ちよく参加するうえで大事なものです。そんな中で今回のテーマは「遊びのルールを変えてみよう!」です。少し不思議に思うかもしれませんが、どういうことなのでしょうか。

■身近なルールは変えていい

みー:「ワイワイ!ウキウキ!パン食い競争」なのに全然ワイワイできなかったよ~。 ひー:ウキウキもしなかったね。 むっしー:じゃあ、やめる? どん:いやいや待って!じゃあさ、もっとワイワイ!ウキウキ!するためにルールを変えるのはどう? みー:そうか、ルールって変えてもいいのか。それいいね!よーし。

みー達は5人で「パン食い競争」をします。ところが、年上で背の高いどんがぶっちぎりで1位。他の4人は楽しめないまま終わってしまいました。みー達が、「楽しくない、もうやめる?」と話していたところに、どんから「ルールを変えてみないか」という提案をされます。

5歳頃になるとルールのある遊びを通して、遊びの楽しさを実感したり友だちとのつながりが深まったりします。一方で、苦手なルールの遊びだと気乗りしない子が出たりもするものです。そうした時には、決まりのルールで、やる・やらないを決めるのではなく、「どうしたらおもしろくなるかな?」「遊びのルールは変えていいんだ!」と知ってほしいと思います。

同じように家庭内でのルールや約束事も、状況や成長段階によって、より良いものに変えていってもいいですね。ただ、多くの人が守る社会的な大きなルールは、自分たちだけで勝手に変えられないことも子ども達に伝えてあげてください。

■ルールを考える過程を大切に

どん:パンクイズのおかげで、しーはワイワイ!したけど、    逆に俺はワイワイできなくなっちゃいましたー! しー:じゃあ、こういうのはどう?パンクイズに答えるか、選べるようにするの。    それともたかーい場所にあるパンをもう一つくわえるか、 どん:あ!それいいね! みー:じゃあ、そういうことで!あ、ちょっといいですか? ひー:はい、みー大魔王! みー:むっしー代将軍、なんか言いたいことあるんじゃない? むっしー:うん、実はさ、パンが苦手なんだ みんな:えー! むっしー:ごめん。みんな楽しそうにしてるから言い出しにくくて。 みー:おっけー!じゃあ、思い切って、ルールをこう変えちゃおう!

みー達はパン食い競争について、どうしてみんなが楽しめないのか、どんなルールだったら楽しいか試行錯誤を繰り返します。ルールを考える中でみー達が大事にしていたのは“みんなが楽しむこと”です。そのために、誰かの意見を押し通すのではなく、みんなの意見を聞こうと心がけていましたね。話し合いを繰り返す中で、友だちの本当の気持ちを知ったり相手の立場を考えたりすることができるようになっていました。また、話し合いでアイデアを出したり、自分の意見を伝える経験にもなっていましたね。遊びのルールを変えたり作ったりすることは、課題をみつけ対応策を考える力や他者を思いやる力が育まれていきます。

もし、家庭内のルールや約束事を見直す場合も、おとなだけで新しいルールをつくるのではなく、ぜひ子ども達と意見を交換しながら相談して決めてみてください。

■子どもの自由な発想を大切に

おじさん:いえいいえーい!DJおじさんでぇーす! 最後はここでダンスターイム!!ブリング・ザ・ビーツ!! 5人:ゴール!!! ひー:みんな優勝~!!!! どん:いやーワイワイしたな! しー:ウキウキもしたよ。 むっしー:最後のダンスは盛り上がったなー! みー:みんなで楽しめるようにルールを考えるのは楽しいんだね!

みー達の「パン食い競争」は会議を経て「いろんな食べ物くい競争」になり、そしてゴール手前にはダンスタイムが設けられました。そして、最後はみんなで一斉にゴール!「あれっ?競争だったのになんで?」とおとなは思うかもしれません。子どもたちが遊んでいる様子を見ていると、なんだか意味の分からないルールで盛り上がっていることがあるものです。同じ遊びでもルールは日によって変わったり遊ぶメンバーによって変わったりすることもあります。おとなから見ると整っていない、はちゃめちゃなルールが出来上がっているかもしれませんが、それでいいんです。子どもたちの自由な発想で、新たな工夫や作戦を次々生み出していってほしいと思います。そうして上手に工夫できるようになることで、おとなになってからも柔軟にいいものをつくり出せる人間になることでしょう。