監修: 和光小学校・和光幼稚園 北山ひと美(性教育) 東京大学 汐見稔幸(教育学・教育人間学・育児学)
【ねらい】
からだには、ここからは人に入ってほしくないというスペース(境界線)がある。
・からだの周りを覆うスペースの広さは自分にしか分からない。
・じぶんのからだのスペースは、じぶんが決めてよい。じぶんのからだのスペースは尊重されていい。
和光小学校・和光幼稚園 北山ひと美さんからのメッセージ
今回の物語は、みーが、なぜかママとのハグをちょっとイヤだと感じてしまったことからはじまります。じつは、どんな人にもからだの周りに、ここからは人に入ってきてほしくないと感じるスペースがあります。このスペースは目に見えるものではありませんが、じつは、自分を守るためにとても大事なんです。
■子どもにもパーソナルスペースがある
おねえさん:これがお客さんの体の陣地っすね。いつもは見えてないんですけど ドッジボールの陣地と一緒で、自分のエリアみたいな感じっすね みー:なるほど。体にも陣地があるんだ おねえさん:お客さんはだいぶ広めっすねー。例えば、この陣地の中に私が入ると… みー:あー、ちょっとイヤかもです おねえさん:ですよねー。でも、この陣地から出ると? みー:あ、そこなら大丈夫です おねえさん:今みたいに、これ以上は入ってきて欲しくないなーって感じるエリアが お客さんの陣地っす
みーは、おねえさんに借りた「まるみえゴーグル」をかけます。すると、からだを取り囲むようなスペースが出現しました。番組ではスペースのことを「陣地」と呼んでいましたね。赤ちゃんのように誰かのお世話が必要だった頃とはちがい、5歳頃になると自分のことは自分でやれることが増えてきます。
同時に大事になってくるのが「自分のからだのことは自分の感覚や意思で決める」「からだの主人公は自分だ」という意識を持つことです。その代表的なものが「からだの陣地(スペース)」です。おとなが愛情表現でこどものからだに触れる際には、「手をつないでいい?」「ハグしていい?」と聞いてあげると、こどもは「自分の意思で決めていいんだ!」「からだの主人公は自分なんだ!」と意識しやすくなりますね。
また、もし人に何かされて「なんかイヤだな…」と思ったときにも、相手のことがイヤというだけではなく、「自分のからだの陣地に人がはいってきた」そのことがイヤだったのかもしれないですよね。そのことに気付けるようになるためにも、からだの陣地についてこの頃から意識していくことが大切なのです。
■からだの感覚は自分にしか分からない。
パパ:おかえりー みー:お腹すいたからダッシュで帰ってきたよ パパ:さあ、おかえりのギュー、しようか みー:いや、汗だくだから、ハイタッチにしておくよ パパ:了解っ!
みーは「まるみえゴーグル」をつかってその時々の自分の陣地を見てみることにしました。すると、汗だくで帰ってきた日は、みーのからだの陣地はとても広く、誰かにあまり近づいてほしくない状況だったようです。みーはパパからのハグを断り、代わりにハイタッチにしたいと伝えていましたね。一方、怖い夢をみた時のみーは、からだの陣地がとても狭く、パパにできるだけ近くにいてほしいような心境になっていました。
状況や気分、相手によって、心地いいと感じるからだの陣地の広さは変わるものです。もちろん、もともとからだの陣地の広い人も狭い人もいます。要は自分にしか分からないし自分で決めるものなのです。おとなは、出来るだけこどもの希望に添って接してあげられるといいですね。
ただし、危険な場所など安全のために手をつないだ方がいい場面では、おとなの判断でつないであげてください。その際はこどもにその理由を伝えてくださいね。
■がまんせずイヤだと伝えていい
めろん:どうしてハグしてくれないの?! そーだ:今日はそんな気分じゃないの ごめんなさい。理由はないの。なんとなくイヤなの でもこれだけはわかって。あなたのことは大好きよ でも今日はハグしたくないの めろん:わかった。またしたくなったら言って
みー:そうか。みーがイヤだって感じたら、我慢しなくていいんだな。
友達や大好きな人の言葉を受けて、つい自分の「いやだ」という気持ちを我慢してしまい、相手に応えようとすることはこどもでもあります。例えば、友達と「公園に行くときはいつも手をつなごう!」と約束していたのに、そんな気分じゃない日があったとします。そんなときはそーださんのように約束よりも自分を優先して、「今日はつなぎたくないんだ」と伝えていいと私は思います。
逆に、友達から「今日はつなぎたくない」と言われたら、仲が悪くなったのではなく「今日はそういう気持ちなんだね」と尊重してあげるのがいいですね。おとなでもこどもでも、互いを尊重しあえる関係は心地がよく、相手は自分を大切にしてくれていると感じられるのではないでしょうか。
「自分のからだのことは自分の感覚や意思で決める」「からだの主人公は自分だ」という意識は、将来健全な人間関係を築くための力になってくれると思っています。
『やってみようソング~からだのじんち バージョン~』
パパはみーの代わりにトイレにはいけない みーは みーのことじぶんでする ワンまるがおなかいっぱいになってもみーは腹ぺこ みーは みーのこころちゃんとみつける
陣地が広―いときも狭―いときもあるけど、 それがわかるのは じぶんだけ!
じぶんの体や気分は、じぶんで大切にしよう! みーを守れるヒーローは みーだけなのだ!
ジブンブン ジブンバンボン ジブンブン ジブンバンボン じぶんでやってみよう だれのことでもない じぶんだけのじぶん