監修: 東京大学 汐見稔幸(教育学・教育人間学・育児学) 東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター 遠藤利彦(発達心理学)
【ねらい】
人それぞれ「はずかしい」と思うことは違うことがある。
・自分の感覚をおしつけるのはやめよう。
・自分の感情にそれぞれのペースで折り合いがつけばいい。
東京大学 汐見稔幸さんからのメッセージ
こどもが「恥ずかしくてやりたくない」と言うとき、まわりは「どうして恥ずかしいの?」と驚いてしまったり、そもそも「そんなことがはずかしいの?」と疑問に感じてしまうことがありますよね。「そんなこと恥ずかしくないから大丈夫だよ!」と相手に伝える人もいるかもしれません。自分以外の「恥ずかしい」という気持ち、どう受け止めたらいいのでしょうか?
■想定外のことで、恥ずかしいと感じる人がいる
みー:あれ?しー、またやらなかったの? しー:うん…どうしても恥ずかしくて… みー:プゥってするの、そんなに恥ずかしい? しー:いや、恥ずかしいのはそこじゃなくて、スキップが恥ずかしいんだよ しーさ、スキップするとき口がとがっちゃうみたいなんだ みー:えー、そんなの恥ずかしくないって。ねえ? ひー:そうだよ、プゥのほうがよっぽど恥ずかしいよ しー:うん、でも… みー:大丈夫だからやろうよ
スキップするときに口がとがってしまうことを恥ずかしいと思うしー。みーは、しーを安心させようと「そんなの恥ずかしくないよ」と言っていましたね。みーは本心で「口がとがってしまうことは恥ずかしくない」「気にすることはない」と思ったのかもしれないし、しーを勇気づけようとしたのかもしれません。本人を安心させようと、周りが「そんなの恥ずかしくないよ」と伝えることはおとなでもこどもでもよくあることですよね。ですが、それは、かえってこどもの気持ちを苦しくさせるかもしれません。
人から見られたり注目されることを「恥ずかしい」と思ってしまう背景には、「自分の理想通りに振る舞えないかもしれない」と苦手意識を持ったり勇気を出せないところからきていることがあります。それだけ本人のこだわりや理想の姿があるということなのですね。
「恥ずかしい」か「恥ずかしくない」かは、周りが決めることでも周りの言葉で簡単に変わることでもないんです。「恥ずかしい」と言っている子には、「恥ずかしいんだね」とその気持ちをそのまま受け止めてあげることが大事です。その感情のまま受け止めることが、その子自身がまるごと無条件的に受けいれられている、愛されているという感覚の形成につながり、結果的にこどもの自尊心を豊かに育むことになります。
■恥ずかしいは人それぞれ 自分のペースでいい
ママ:みーは何が恥ずかしいの? みー:みーはねえ、みんなに誕生日をお祝いされるのが、 うれしいんだけど、ちょっと恥ずかしい、かな ママ:へー、ママは平気だなー恥ずかしいって思う気持ちは、人それぞれなんだよ みー:そうか。しーには、恥ずかしくないよ!って言っちゃったけど、 しーが恥ずかしいって思う気持ちは、しーにしかわからないことなのか
みーは、みんなが「恥ずかしい」と思っていることを聞いてみました。すると、みーには平気なことでも、人によって恥ずかしいと感じることがあると分かります。そして、みーが恥ずかしいこともママにとっては平気なんだと知ります。人それぞれにこだわりや大切にしていることがあり、良いか悪いか平気か平気じゃないかも人それぞれ基準があるんです。
物語では、しーはスキップ中にとがってしまう口を手で覆いみんなと一緒にスキップゥにトライすることにしました。「恥ずかしい」気持ちとやりたい気持ちに折り合いをつけるしーのアイデアだったのだと思います。恥ずかしいという気持ちは、「出来るようになりたい」「自分もそうなりたい」という気持ちの裏返しということがあります。こどもの様子をよく見て、タイミングを考えて「やってみる?」と声をかけてみてください。その子の理想の姿や納得のいく姿を目指して頑張るための後押しもときには必要です。ですが、まわりと比較して焦ったり、「トライさせないともったいない」「まわりにあわせないと」と親が無理強いするものでは決してありません。あくまでその子のペースを大事にしてくださいね。
しー:そうなんだ。恥ずかしい気持ちも、じぶんだけの気持ち。 その気持ちを大事にしよう~
「みんなアイラブみーソング」
アイラブみー まほうのことば あふれるきもちをしんじよう
アイラブみー ゆうきのじゅもん じぶんってとってもおもしろい
アイアイアイ アイラブみー わたしがうたおう
アイアイアイ アイラブみー みんなのうただよ
アイアイアイ アイラブみー アイラブみー