【解説】ロシア民間軍事会社が刑務所で受刑者を兵士勧誘? (油井'sVIEW)

NHK
2022年9月28日 午後2:00 公開

ロシアはウクライナでの軍事侵攻で兵力不足を指摘されていますが、ロシア国内で兵員の募集活動にあたっていると言われているのが、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」です。

ロシア国内の刑務所でワグネルの代表が受刑者を兵士として勧誘している映像だとされたものがネット上で拡散されました。

その動画ではワグネルの代表プリゴジン氏とみられる人物が受刑者に「半年間戦えば特赦され離任できる」などと話しているというのです。

プリゴジン氏はクレムリンや軍などに食事を提供する外食産業で財を得たとされ、「プーチン大統領のシェフ」という異名でも知られています。

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ロシアの有力紙「コメルサント」によりますと、プリゴジン氏は取材に対して受刑者を兵士として派遣する必要性について「囚人と自分の子どものどちらを送る方が良いですか、考えてみて下さい」と発言したということで、受刑者の動員を正当化したと言えそうです。

イギリスの国防省も「ワグネルが少なくとも7月以降から減刑や金銭と引き換えに受刑者を兵士として勧誘している」ことから「ロシアの兵士不足は深刻さを増している」と分析しました。

ロシア国内では事実上の動員と言える動きが出ており、プーチン大統領の側近の1人でチェチェンの戦闘員を率いるカディロフ氏がSNS上に「ロシア国内の各自治体が1000人ずつ志願兵を準備すれば全国規模で8万5000人という軍勢になる」と書き込み、地域単位で動員をかけるよう訴えたのです。

ウクライナ軍による反転攻勢を受けてロシア国内は動揺しているようにも見えますが、兵力の動員よりも停戦に向けた動きに期待したいところです。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分12秒あります)

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