インドIT人材獲得競争の現場を栗原キャスターが取材!【MondayBiz】

NHK
2023年4月11日 午後8:02 公開

【Monday Biz】

毎週月曜日に各国で取材にあたる特派員がピックアップ。マーケットが注目する今週の世界の重要イベントを深読みするコーナーです 


(「国際報道2023」で4月10日に放送した内容です)

【アメリカ】「シリコンバレーバンク」が破綻してから10日で1か月 新たな金融リスク

金融当局がすぐさま打ちだした異例の対応策により、市場の不安は和らいでいるようにも見えますがー。いま、新たな金融リスクとして浮上しているのがオフィスや店舗などが入る「商業用不動産」です。

コロナ禍での大規模な金融緩和によって緩和マネーが流れ込み、商業用不動産への銀行の融資額は過去最高になりました。しかし、ローンが支払えなくなる事態が相次いでいます

在宅勤務が定着し、全米のオフィスの空室率は50%以上に高止まりしていて、不動産価格が下落していることが要因です。また、中央銀行に当たるFRBの利上げも逆風となっています。

こうしたなか、およそ4500億ドル、日本円で60兆円近い商業用不動産ローンが年内に借り換えの時期を迎えると試算されています。専門家は金利が上昇する中、ローンが支払えずにデフォルトする物件が増え、銀行経営に影響が出るおそれがあるとしています。

専門家:商業用不動産のリスクに焦点が当たれば、特にオフィス物件を多く抱えている銀行にとっては打撃となる。商業用不動産への融資の3分の2は地方銀行が占めていてリスクにさらされている」

商業用不動産をめぐってはFRBの幹部も

「今後、損失が発生するリスクがある」

という認識を示し、今後の焦点になっています。

【フランス】“次のビジネスチャンスを狙え”

手軽な移動手段として利用が広がっている電動キックボード。パリでは、そのシェアリングサービスをことし8月でやめることになりました。

事故の増加や駐輪マナーの悪さが社会問題となり、今月2日、住民投票で シェアリングの可否を聞いた結果、反対が9割となったためです。

一方で、早くも、これを“次のビジネスチャンス”と捉える動きも出ています。例えば、電動キックボードのレンタル業者は

「シェアがなくなるなら、個人で借りる人が増える」と気合い十分。

実際、ある会社のウェブサイトへのアクセス数は この1週間で増えたそうです。スタイリッシュで、CO2も出さないと、支持も根強いキックボード。パリの街からその姿がなくなることは当面なさそうです。

【中国】消費回復も“節約志向”続く?

景気に持ち直しの動きが見え始めている中国ですが、消費の活性化に向けてちょっと気になる調査結果が出ています。中央銀行が3日に公表したアンケート調査では、「お金の使い方」について、「消費を増やす」が23.2%に対して、「貯蓄を増やす」は58%で、 「節約志向」が続いていることがうかがえる結果となりました。

背景の1つとして考えられるのが雇用への不安。今回の調査では雇用情勢について、41.2%の人が「厳しく就職が難しい」などと回答しています。

雇用への不安は景気の本格的な回復の重荷になるため、政府がどのように対応するかが注目されます。

【タイ】外国人観光客にも人気の 「水かけ祭り」

 4年ぶりに、街なかで水をかけ合えます!首都バンコクでは、旧正月を祝う「水かけ祭り」が今週13日から始まります。

コロナによる規制がなくなり開催は4年ぶり。期間中の消費額は、去年より17%増の、およそ5000億円と試算されていて、国内の経済を押し上げる期待が 高まっています。(出典:タイ商工会議所大学の試算)

【栗原キャスターが取材!】インドのIT人材について

ことし、中国を抜いて、人口世界最多になる見通しのインド。世界的にみても理工学系の学位取得者が多く、世界中で獲得競争が行われています。一方で日本は深刻なIT人材不足。こうしたインドからの人材の採用に多くの企業が乗り出しています。

栗原:都内のIT企業のオフィスに来ています。ここ(開発部門)では、海外から来た人たちが7割働いているんですね

スマホ決済サービスを手がけるこの会社では、開発部門の7割が、外国籍の社員。そのうち、4人に1人がインド人です。

インド出身のエンジニア、サカーラ・マノジュさんです。

マノジュさん:私はスタンプカードチームのマネージャーです。新しいサービスをリリースしました。

以前は、インドにある外資系のスマホメーカーで働いていたマノジュさん。

キャリアアップを図ろうと転職を考えていたところ、日本でスマホ決済の普及を目指すこの会社を知り、大きな可能性を感じたといいます。

マノジュさん:インドで(スマホ決済という)社会の変化を目にしたので、日本でもこのサービスは 拡大するだろうと思いました。まだ若いのでリスクを負ってでも挑戦したいと思いました。

会社側は、今後、日本で自社のサービスをさらに拡大していくためにはインド出身のエンジニアが持つ「スピード感」が欠かせないと考えています。

「ぼくたち無意識のうちにリスクヘッジとか根回しをしたりとか、そういう行為が多いですよね。でも、そういった事情をインドの方々っていい意味で、すっ飛ばしてくれるので意思決定の早さとか細かい決定がぼくたち日本の進め方じゃないスピード感で動きますね」

より多くの優秀なIT人材を確保するため、この会社では、去年10月、インド北部のハリヤナ州に現地法人を設立。すでに9人の採用に成功し、今年度は60人程度の採用を見込んでいます。

現地の日本法人の代表は、インド人エンジニアがその強みを十分に発揮できる環境を整えることが、優秀な人材を呼び込む最大のアピールポイントになると考えています。

「インドの拠点に入社したメンバーでも日本のサービスの開発の最前線に携わる機会をつくって オーナーシップをもって開発に携われる、そういう機会をつくっています。インドの拠点っていうのは、日本の子会社とか委託先っていうのではなく、日本の『水平展開』 なんだよっていうのを非常に強調しています」

今、アメリカの大手IT企業が相次いで人員削減を行うなか、そうした人材からの応募もありますが、依然として、獲得競争はし烈です。事業の成長性に加え、日本企業ならではの「チーム戦略」も、人材獲得の大きな強みとなるかもしれないと感じました。

(この動画は8分19秒あります)  

https://movie-a.nhk.or.jp/movie/?v=ayhpr4uj&type=video&dir=iYt&sns=true&autoplay=false&mute=false