ウクライナで戦闘が続く中、ロシア国内ではプーチン大統領がロシア海軍の能力を誇示しました。
ロシア第2の都市、サンクトペテルブルクで31日にロシア海軍の創設を記念する式典が行われ、ロシア海軍の艦艇や潜水艦など40隻あまりが次から次へと登場し会場を沸かせました。
プーチン大統領は式典で「重要なのは海軍力だ。海軍力は国の主権と自由を侵害するあらゆるものに迅速に対応し、ロシアの国境で戦略的な任務を確実に遂行することができる」と述べました。
さらにプーチン大統領は海上発射型の極超音速ミサイル「ツィルコン」についても言及し、数か月以内にロシアのフリゲート艦に搭載する方針を明らかにしたのです。
こうした強硬な姿勢を見せつけることで、アメリカなどをけん制する狙いと見られています。
ロシアは実はウクライナとの戦闘の行方には自信なし?
強硬な姿勢を崩さないプーチン大統領ですがウクライナでの戦闘の行方に自信があるのかというと、今回の式典で「ウクライナでの特別軍事作戦」については一言も言及せず、必ずしもそうとも言えない状況です。
目に見える成果が乏しい上に、ロシア海軍は、黒海艦隊の旗艦「モスクワ」がウクライナのミサイル攻撃を受けて沈没するという失態もあって言及できなかったという見方も出ています。
また、この日は黒海艦隊の拠点クリミア半島のセバストポリでも、ロシア海軍の式典を行う計画でしたが、ウクライナ側から攻撃を受けたことなどを理由に式典を見送ったのです。
このためウクライナのポドリャク大統領府顧問は「ロシア海軍は黒海での式典開催を恐れている。それなのに世界の海の支配を目指した計画を発表?『モスクワ』を含む15隻も失ったのに」とツイートし、ロシア側の強硬な姿勢をやゆしたのです。
南部を狙うロシア海軍の黒海艦船
ただロシア海軍の黒海艦隊は今もウクライナ南部を狙ってミサイルなどを発射できる態勢を整えています。
特に南部では今、ウクライナ側が反転攻勢に出ていますが、次の激戦地になる可能性が指摘されゼレンスキー大統領も「ロシア軍はウクライナ南部の占領地域での支配を強化を試み、東部から一部の部隊を南部に移している」と話しているのです。
戦闘が南部で激しさを増せばロシア海軍の黒海艦隊が海上からミサイルなどをさらに放つ事態が懸念されていて、黒海でようやく始まった穀物輸送ですが、その見通しは極めて不安定です。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は3分22秒あります)