【解説】ロシア多用のイラン製無人機に日本企業7社の製品(油井'sVIEW)

NHK
2022年12月2日 午後3:27 公開

ロシアがウクライナの攻撃に多用しているのがイラン製の無人機です。

この無人機の部品に日本企業7社の製品が使用されているとウクライナ側が明らかにしました。

ウクライナで撃墜されたイラン製の無人機を調査したウクライナのシンクタンク「NAKO」は、調査映像と調査結果の報告書をNHKに明らかにしたのです。

シンクタンクではウクライナ軍とともにイラン製の2種類の無人機を分解して主要な部品の種類や製造元を調べたところ、日本企業7社の製品も確認できたとしています。

シンクタンク「NAKO」のトレグブ事務総長は「イランは長年、制裁下にあるので、部品はロシア製や中国製などが多いと思っていました。しかし驚いたことにほとんどの部品は、日本など西側・民主主義国家のものだったのです」と話しました。

今回まとめられた調査結果の報告書には、各部品の名前や製造企業とその国名が書かれていて、半数以上はアメリカ企業。

日本企業のものはというと、無人機「シャヘド136」については、コントロールボードに使われている「ノイズフィルター」と「バッテリー」に。

「モハジェル6」については「サーボーモーター」「バッテリー」、ビデオシグナルプロセッサーに 使われている「エンコーダー」「カメラ」、電源回路の中に使われている電気の流れを開閉する「継電器」「動画・音声コントローラー」の6製品が日本企業のものだとされています。

確かに製品の画像をアップにするとメイド・イン・ジャパンと書かれているのがわかります。

2種類の無人機であわせると7つの日本企業の製品が組み込まれていたことになるわけです。

NHKが問い合わせた日本企業のうち回答があった企業は「民生用の製品で一般的に販売されている。イランには直接販売しておらず、どのように手に入れたのかわからない」としています。

また経済産業省は「一般論として無人機の部品は、その仕様・性能によっては輸出の規制対象になる場合があって許可が必要」としています。

ただ今回のケースですが「個別事案については言及しない」としています。

今回、調査にあたったシンクタンクは「現在の制裁や輸出管理は機能していない。権威主義国家に西側の技術使用を許してしまっている。日本政府はこの問題を調査して欲しい」と述べています。

日本の製品が無人機に使われ、ウクライナの人たちの命が奪われている、その対策は急務といえそうです。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は3分24秒あります)

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