EUの執行機関ヨーロッパ委員会は17日、ウクライナをEU加盟に向けた交渉開始の前提となる加盟候補国として認めるよう勧告しました。
現在、EUの加盟国は27か国で、5か国が加盟候補国となっています。
トルコは1999年に、アルバニアは2014年に候補国となりましたが、今も加盟の見通しはたっておらず、加盟までには長い期間がかかります。
フランスのマクロン大統領は、先月、ウクライナの加盟には「数十年かかるだろう」と発言しています。
というのもEUに加盟するには、EU側が設けている加盟の条件を満たさねばなりません。
例えば民主主義、法の支配、人権、マイノリティーの保護が尊重される国でなければなりませんが、EUのフォンデアライエン委員長は「ウクライナは法の支配を強化してきたものの、まだ改革の必要があり、それは汚職との戦いの実行だ」と注文をつけています。
ウクライナでは以前から政財界の汚職の問題が深刻です。
汚職問題を調査する国際的NGOによると、ウクライナは世界の中で汚職撲滅度が180か国中122位で、EUの中で最も低いブルガリアでも78位のため、かなり差があります。
コメディアンであったゼレンスキー大統領が3年前の選挙で勝利した要因の1つが、汚職撲滅を掲げたアウトサイダーとして期待が高かったからですが、ゼレンスキー大統領の汚職対策には進展がみられていません。
さらに経済力も加盟に向けた障害の1つで、1人あたりのGDPはEUの中で最も低いブルガリアと比べても半分以下となっています。
そのため、EUの中でもデンマークやポルトガルなどからウクライナの加盟に懐疑的な見方が出ているとも伝えられてきました。
EUの首脳会議で今週にも方針が打ち出される予定で、もし加盟候補国として認められれば"ロシアではなくヨーロッパ"へと舵を切る象徴的なものとなりそうです。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
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