ロシアによる軍事侵攻で以前から指摘されているのがロシア軍の兵力不足ですが、ロシア軍が、刑務所にいる外国人受刑者を戦場に投入したのではないかという疑惑が浮上しています。
この疑惑を発表したのは、アフリカのザンビアの政府です。
ザンビア外務省の発表文によりますと、ザンビア政府の支援でロシアの研究所に留学していた23歳のザンビアの男性がウクライナの戦場で亡くなったというのです。
この男性は、2年前にロシアの法律に違反して禁錮9年半の判決を受けてロシアの刑務所にいたということですが、9月にウクライナの戦場で死亡し、11月になってその通知を受けたとしています。
カクボ外相は「ロシア軍の一員としてウクライナで戦わせるために刑務所内で勧誘され、戦場に送られた可能性がある」としていて「ロシア政府に緊急に説明するよう求めた」としています。
ロシアによる受刑者の勧誘をめぐっては、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の代表がロシア国内の刑務所を訪れて、受刑者たちに兵士にならないかと勧誘している動画が拡散され、大きな話題になりました。
それだけにザンビア政府は、ロシア側が減刑などの見返りを提示してザンビア国民を戦場に送ったのではないかと疑念を強めているのです。
これはザンビアだけの話では済まない可能性があり、ほかの外国人受刑者も戦場に送られるのではないかという懸念もあります。
ロシア政府は、法律を改正して外国籍についてはロシア軍の兵士になれるとしたものの、受刑者についてはその対象外としているだけに、ザンビアの男性を巡る謎が深まっています。
ロシア外務省は確認作業を進めていると発表しましたが、外国人受刑者も陰で戦場に投入しているのではないかという疑念が強まっていて、正確な情報の公開が求められています。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。