フィリピンが実効支配するパグアサ島の周辺海域で、フィリピン海軍が海面に漂う大きな金属片を発見しました。
フィリピンの沖合では、11月に入って中国が宇宙ステーション組み立てのために打ち上げた大型ロケットの一部と見られる残骸が相次いで発見されていて、今回の金属片もロケットの残骸と見られています。
そしてフィリピン海軍が、この金属片をゴムボートにロープでくくりつけてえい航していたところ、突然、中国海警局の船が現れてロープを切断して金属片を奪い去ってしまったということです。
フィリピン側は強奪されたと主張していますが、中国側は「フィリピン側が先に浮遊物を引き上げ、引っ張ったものの双方が現場で友好的に協議し、フィリピン側がその場で中国側にその浮遊物を返還し、中国側はフィリピン側に謝意を示した」と否定しています。
この中国のロケットの残骸をめぐっては、フィリピン政府がこれまで フィリピンの沖合に頻繁に落下するとして、被害が生じた際に補償を請求できる国連条約の批准を目指すとしていて、中国側としては、今回、中国のロケット落下の証拠を隠したかった思惑もあったと見られます。
米中覇権争いにも関係…マルコス新政権はどう出る?
今後の注目は、ことし6月に発足したマルコス新政権の姿勢です。
アメリカのバイデン政権は、中国に対抗する同盟国として、マルコス政権をアメリカ側に引き寄せ、連携を深めたい狙いです。
ただ、マルコス大統領は、最大の貿易相手国・中国とも良好な関係を維持する考えを示し、年明けの来年1月早々には中国を訪問する計画です。
マルコス大統領が、どこまでアメリカと共同歩調を取れるのか。米中覇権争いの焦点の1つです。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分11秒あります)