【ウクライナからの声④】 市長が拉致された街で“私も殺されるかも"

NHK
2022年3月17日 午後2:59 公開

すでにロシア軍によって制圧された街では、人々への締め付けが厳しくなり、市長が拉致される事態まで起きています。ロシア軍に抗議するデモに参加してきたイリーナ・ベズグロワさんは一時拘束され、“殺されるかもしれない”という恐怖にさらされています。

ロシア軍に抗議の声をあげてきた イリーナ・ベズグロワさん(41)

ウクライナの国旗を身にまとってインタビューに応じてくれたイリーナさん。

ウクライナ南部・人口15万人の街メリトポリで会計の仕事をしていました。

平穏な日常は、ロシア軍が侵攻を始めた2月24日に終わりました。

「2月24日の朝、私は爆発の音で目を覚ましました。それまでロシアが私たちを攻撃するなんて考えもしませんでした。それ以来毎朝、私は恐怖で目を覚まします。彼らは私たちを撃ち、街やインフラを破壊しました。90の民家も破壊されました。ここのような小さな街にとって、本当に深刻なことなのです」

まもなくロシア軍はメリトポリを制圧。

3月1日にはフェドロフ市長が「メリトポリは降伏していないが、一時的に占領されている」と声明を発表しました。

それでも当初は数多くの市民が路上に集まり、ロシア軍の占領に対して抗議の声を上げていました。

イリーナさんが送ってくれた映像には、ウクライナの国旗をもって声をあげる人々の列や、ロシア軍とみられる兵士に人々が詰め寄る姿が映っていました。

イリーナさんが送ってくれた映像

<イリーナさんが送ってくれた映像>

市長は拉致され…今は“ウクライナ人だと口にするのも怖い”

しかし占拠が長引くにつれロシア軍の締め付けは厳しさを増し、兵士の態度も変わってきたといいます。

「最初の1週間、ロシア軍は私たちに手を出そうとはしませんでした。脅かしてはまずいと考えたのでしょうか。しかし今は違います。外に出てデモに参加すると彼らは銃口を向けてきて、私たちの話を聞こうともしません。『アメリカ人が悪い』『ここはロシアだ』と彼らは言います」

そして3月11日、衝撃的な映像が世界を駆け巡りました。

連れ去られる市長(右上の黒い服の男性)

<連れ去られる市長(右上の黒い服の男性)>

監視カメラに映っていたのは、フェドロフ市長が軍服を着た集団に連れされられる様子でした。

市長はロシア軍への協力を拒否していたとも伝えられています。

拘束された市長に代わって、ロシア寄りと見られる新たな市長の就任も発表されました。

市長が拉致された3日後、イリーナさんも一時拘束されてしまいました。

「行政府も占領され、市長も拉致されました。ウクライナの旗を持っているというだけで、私の子どもと同じくらいの年の男の子が殴られたのです。私が見ていられなくて止めに入ると、拘束されてしまったのです」

日に日に強まるロシア軍からの恐怖に押し潰されそうになるというイリーナさん。

それでも故郷の街を離れるつもりはありません。

「次にデモに参加したら私は家に帰れるでしょうか。ウクライナ人であるということを口にすることも怖いです。でも私はどこへも行きません。どこにも隠れる場所はないのです。ここは私の国で、私はこの国を守ります。私は殺されることになったとしても、ロシア軍が人々に手を触れることを許しません。世界の皆さん、聞いていください。ウクライナは大きな悲劇に見舞われています」

※3月16日、ウクライナ大統領府の高官はフェドロフ市長が解放されたことを明らかにしました。地元メディアは「捕虜となっていたロシア軍兵士9人が市長解放のために引き渡された」と伝えています。