アメリカは太平洋島しょ国地域で大使館を増やす方針を発表しました。
これは、ことし2月にバイデン政権が発表した、インド太平洋戦略に基づくものです。
「太平洋島しょ国地域で大使館を増設することでアメリカの関与を強化していく」とうたっています。
アメリカはこの地域の中の6か国に大使館を設置していますが、中国がすでに8か国で設置していることから、外交官の存在感で中国をしのぐことを目標に掲げたのです。
アメリカは今後、ソロモン諸島、キリバス、トンガで大使館を開設する方針で、開設されれば大使館は計9か国となって中国を上回ることになります。
アメリカは、9か国に大使館を設けている日本、オーストラリアやニュージーランドと連携して、この地域で中国に対抗したい狙いです。
太平洋諸島フォーラムからも見える米中せめぎ合い
この太平洋の島しょ国やオーストラリアなど18の国と地域で作る「太平洋諸島フォーラム」の年次総会が11日から行われています。
ことしはオーストラリアやニュージーランドの首脳に加え、アメリカからもハリス副大統領がオンラインで参加して対中国でこの地域の結束を目指す動きがあります。
一方でアメリカなどの動きを阻むため、中国政府が中国寄りの国々に圧力をかけているという見方も出ています。
このフォーラムから脱退を表明している加盟国のキリバスは、脱退の理由として去年行われた太平洋諸島フォーラムの事務局長選挙をあげています。
事務局長は「ミクロネシア」「ポリネシア」「メラネシア」の3地域の持ち回りで選出されることが慣例となってきました。
去年は本来であれば「ミクロネシア」から選出される予定だったものの、慣例に背き「ポリネシア」から選出されたのです。
ただ一部のメディアによれば「キリバスの脱退が事務局長選挙によるものだ」というのは表向きの理由で、実際は中国が参加しないよう圧力を加えたという見方を伝えています。
中国外務省は「根拠のない報道だ。中国は太平洋島しょ国の内部には干渉しない」と否定しています。
その中国政府も、別の枠組みで今週にも太平洋島しょ国とのオンライン会談を目指しているという報道もあり、米中対立が影を落とす波乱含みとなっています。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は3分00秒あります)