「私たちの子どもは徴集兵にもかかわらず、モスクワに搭乗し、違法に特別軍事作戦に参加した。戦闘の傷が癒えないのに再び戦場に送られるのは認められない」
これはロシア軍の捜査機関に送付された書簡だとされるものです。
去年ノーベル平和賞を受賞したムラートフ編集長が率いるロシアの独立系新聞が掲載した記事で、ウクライナ軍の攻撃を受けて沈没したロシア海軍黒海艦隊の旗艦「モスクワ」の生存者の母親たちがロシア軍の捜査機関にあてた書簡を送り、説明を求めているとしたのです。
ロシアでは、戦場に行くのは職業軍人で徴集兵は行かないのが原則とされています。
しかしモスクワに乗り込んだ徴集兵たちは、今月下旬にも再び別の艦船に乗って戦場に投入される可能性があるとして、母親たちは怒りの声をあげており、ロシア側の士気の低下がうかがえる事態となっています。
またウクライナ国防省もロシア軍の士気の低下の証拠として、傍受したロシア兵の会話を連日のように公表しているのです。
ロシア兵の息子:(次の任務に)参加したくないと言ったら上官から軍検察に行けと言われた。
父:食べ物や飲み物など何もないなど実態を全部、軍検察官に言いなさい
ただウクライナ側に関しても同様に士気の低下が指摘され始めています。
イギリス国防省が発表したのは、ロシア・ウクライナ双方が士気の低下の問題を抱えているということです。
ロシアの方がより大きな問題としながらも「ウクライナ軍はこの数週間、脱走兵に悩まされている」と指摘したのです。
ウクライナを支えているイギリス政府が、ウクライナ側の士気の低下に言及するのは極めて異例で、圧倒的な火力の差で苦戦を強いられ、ウクライナ側に脱走兵が出ている窮状がうかがえます。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
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