イスラム主義勢力タリバンが実権を握って1年4か月となりますが、12月2日に続き6日にも爆発が起きこれまでに7人が死亡しています。
そのタリバンのもと、女性の権利が制限され経済状況も悪化する中、打開を目指して奔走しているのがアフガニスタンの著名な女性活動家、ファティマ・ギラーニさんです。
国際会議に出席するため日本を訪れたギラーニさんに話を聞きました。
(「国際報道2022」キャスター 油井秀樹)
タリバンによる女性の権利制限を憂慮…解決の糸口とは
ファティマ・ギラーニさんは、アフガニスタンの赤十字組織にあたる赤新月社の総裁を12年間務めました。
現在はロンドンとカブールを拠点に活動しています。
ファティマ・ギラーニさん:人々は苦しんでいます。銀行は閉鎖され、仕事はありません。アフガニスタンの中間層は飢えています。最大の懸念は不確実性です。次に何が起こるのか毎日わからないのです。
ギラー二さんが憂慮していることの1つは、タリバンによる女性の権利の制限です。
タリバン政権は、女子生徒の中等教育を認めていません。
一部の公園や遊園地への女性の立ち入りを新たに禁止するなど、公共の場での女性の自由を著しく制限し始めているのです。
ギラーニさん:アフガニスタンには教育された女性たちが大勢います。女性たちは国のために奉仕する責任があります。それを妨げるのは間違っています。ただ国際社会は女性の問題を政治的な争いにはしないでほしいのです。問題解決に向けてタリバンとは入念に計画した巧みな対話が必要です。
<女性の立ち入りが制限されている聖びょうを訪れた>
ギラーニさんはタリバンが実権を握る前、アフガニスタン政府の交渉団の1人としてタリバンと交渉を重ねてきました。
この中でタリバン側は、教育をはじめとする女性の権利や、女性や少数派の民族が参加する包括的な政権の発足に前向きな立場でした。
実権を握った後もタリバン側は当初は同様の立場を示したものの、国際社会は実行に移されていないとしてタリバンを正当な政権として承認していません。
ギラーニさん:いま直面している問題からまずは向き合い始めましょう。少しずつでも進めば、国内の安定や国際社会からの承認へと前進します。
油井秀樹「国際報道2022」キャスター:この失敗は誰の責任ですか?タリバンの責任ですか?
ギラーニさん:みんなの責任です。タリバン、前の政権、各部族の指導者や長老たち、そして男性も女性も全員にアフガニスタンを立て直す責任があります。当然、大国の責任でもあります。
さらにギラーニさんが懸念するのは、タリバンと対立し爆弾テロなどを起こしているIS=イスラミックステートの台頭です。
タリバン政権以降、比較的落ち着いてきた治安が悪化しかねない危険な状況で、国際社会はタリバンとの対話を急ぐべきだと提言しています。
ギラーニさん:好きであろうと嫌いであろうと、アフガニスタンの現政権はタリバンです。関与しなければ現状を改善できません。改善はタリバンに関与して初めて 可能となるのです。
取材後記
ギラーニさんは「タリバンを孤立させてはならない」と繰り返し訴えていました。
国際社会の関与がなくなれば、アフガニスタンが再びかつてのような国際テロの温床に なるのではないか。
そして今はその分岐点にあると強い危機感を持っているからです。
この20年、アフガニスタンにばく大な支援を行ってきた日本も、支援を続けるのか、それともタリバン政権発足を機に背を向けるのか、今、問われています。