【徹底解説】ロシア頭脳流出 “浄化で体制強化”へ転換か

NHK
2022年4月14日 午後7:31 公開

ウクライナへの軍事侵攻後、ロシアを離れ他の国で暮らすロシア人が増えています。推計は3月の時点で30万人。理由は「経済制裁による生活への影響」「そもそも戦争に反対」「軍事侵攻に反対する声を封じ込めようとする言論統制」などがあげられます。ウクライナで激しい戦闘が起きている中、ロシアでは何が起きているのか。元モスクワ支局長でロシアを長年取材してきた安間英夫解説委員が詳しく解説します。

安間解説委員:まずなぜロシアを離れるロシア人が増えているのかということですが、独立系のレバダセンターが「ロシア人が外国に移住したいと考える理由」を世論調査した結果を表にしました。経済的な状況、子どもの未来が40%台で、医療やキャリア形成も30%を越えています。私が現地で暮らしていた実感からも、政治、経済、社会面で、ロシアでは得られない自由や豊かさ、快適さを求める気持ちが影響してロシアを離れて国外に出たいと考える人がいるのだと思います。

油井秀樹(「国際報道2022」キャスター):ロシアを離れる人は、過去に比べてどのくらい増えているのでしょうか。

安間解説委員:ここ10年でロシアから移住した人の推移はロシアの人口1億4600万に対して、2011年は3万6000人でした。2012年にプーチン大統領が復帰したときに12万2000人に急上昇しました。さらに通算4期目に入った2018年以降は、40万人を超えたという状況です。これはプーチン政権が権威主義を強め、社会の閉塞感が強まっていく時期と重なっているのです。ただ軍事侵攻後の2月以降、ロシア人が行った先で民泊を断られるといった差別や迫害を受けるケースもあることから、3月下旬になって移住希望者は減っているというデータもありますので、今後の推移は注意して見ていく必要があります。

出国者増加がプーチン政権に与える影響は?

安間解説委員:今のところ外国への移住の増加と政権への支持率の間には、はっきりした相関関係があるとは言えないのが実情です。プーチン政権もかねて人口流出、とりわけ高い才能や技能、技術を持つ人たちのいわゆる頭脳流出と言われる問題を課題と位置づけてきました。しかし今となっては、重要なのは体制強化なのではないかと本音をうかがわせる発言が先日ありました。

安間解説委員:プーチン大統領は3月「ロシア国民は真の愛国者と人間のクズや裏切り者を区別できる。口に入ったハエを吐き出すように排除する」と話しました。少しわかりにくいかもしれませんのが、ペスコフ報道官がプーチン大統領を補足するようなかたちで「困難な時代には多くの人々が本性を現す。ある人は国を出て他の国に移住する。そうやって浄化が起こる」と述べたのです。この2人の発言から浮かび上がるキーワードは「浄化」だと思います。まさに民主主義を否定しかねない言葉でありますが、これが戦時体制下だから出たことばなのか、政権の本性を現したものなのかは注意が必要だと思います。事態は進行中で、今後ロシア軍の多大な犠牲が明らかになったり、市民生活に直結するほど経済が悪化したりすれば、プーチン大統領の支持率に影響が出てくることがあるかもしれないので、引き続き注意して見ていく必要があると思います。