【解説】ロシア軍 ウクライナ南部ダム爆破計画?その理由とは (油井'sVIEW)

NHK
2022年10月24日 午後7:25 公開

ロシアのウクライナ軍事侵攻の戦況は、ロシアが一方的な併合に踏み切った南部へルソン州での戦いが注目されています。

ウクライナ軍が攻勢を強めており、上記の画像にありますように緑色の地域がウクライナが奪還したとされる地域で、黄色の円が過去24時間戦闘が激しい地域となっています。(10月20日時点)

ウクライナ軍はロシア側に占領されたこの中心都市ヘルソンに向けて、部隊を進軍させる勢いを見せていると言われています。

しかしウクライナ軍の勢いを止めるため、ロシア側がこのドニプロ川沿いにある水力発電所のダムを破壊させることを計画しているとウクライナ側が主張しているのです。

ゼレンスキー大統領は「この発電所は大きな電力施設だ。もしロシアがこのダムを破壊すればヘルソンを含む80以上の市町村が直ちに洪水の被害を受ける」と警告しています。

ロシアはウクライナ側の計画と主張…洪水範囲予想図まで拡散

これに対してロシア側は、ダムを破壊しようとしているのはウクライナ側だという情報を発信しています。

スロビキン総司令官は「敵はヘルソンのインフラや住宅を故意に狙っている。水力発電所のダムも損害を受けた」と発言。

またロシアが任命したヘルソン州の責任者は「ウクライナ側がダムを破壊しようとしている」として、住民をロシア側に強制移住させる考えを示しています。

さらにロシア側はネット上に、ダムが破壊された場合の洪水の範囲を示した予想図を拡散しており、ロシア側がウクライナ側の非人道性を主張したいねらいがあるのではという見方も出ています。

ロシアの自作自演?撤退を目立たなくさせるためにダム破壊を計画?

一方ウクライナ側は、ロシアが自作自演でダムを破壊するねらいだと反論。

冬を前にインフラを徹底的に破壊する一環で、ウクライナの電気を奪い、国内で生活するのを難しくさせることで、ウクライナから大量の難民をヨーロッパに発生させ、ヨーロッパを困らせるのがねらいだとも主張しています。

またアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、ロシア軍が州都ヘルソンからの撤退を準備していて、その撤退を目立たなくさせるためにダムを爆破する計画ではないかという分析を示しています。

情報戦を含めて激しさを増す南部ヘルソンの攻防ですが、その標的は生活インフラとなっていて、一般市民の生命の危険が一段と懸念されています。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分48秒あります)

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