ロシアがウクライナの4つの州を一方的に併合するとしたことについて、国連総会では、ロシアによる併合の試みは国際法に違反し無効だと非難したうえで、ロシアに対して一連の決定の撤回などを求める決議案の採決が行われ、143か国が賛成して採択されました。
アメリカのバイデン大統領は「ロシアの責任を追及するため世界はかつてないほど結束した」と歓迎する声明を発表しました。
軍事侵攻に踏み切ったロシアを非難する決議(3月)
賛成141か国
反対 5か国
棄権 35か国
軍事侵攻に踏み切ったロシアを非難することし3月の決議からは、反対・棄権の数は変わらず今回は、賛成が若干増えた形です。
軍事侵攻の長期化に伴いロシア非難に賛成の国々は減っていると見られていただけに、アメリカメディアのポリティコは「予想を上回る圧倒的多数の国々がロシアを非難した」と報じました。
ロシアの孤立化を目指すアメリカとしては、強いメッセージをロシアに突きつけることができたかたちです。
アメリカ 失点を重ねた2つの「外交的敗北」
しかしアメリカは今月、2つの外交的敗北を喫し失点を重ねていました。
敗北の1つはOPECプラスです。
サウジアラビアなどのOPEC=石油輸出国機構にロシアなどの産油国が加わるOPECプラスは、先週、来月以降の原油の大幅な「減産」を決めました。
アメリカは「減産」に反対し、バイデン大統領がサウジアラビアを訪問して要請していただけにホワイトハウスは「失望」を表明し、同盟関係とも言えるサウジアラビアとの関係を見直すと明らかにするなど波紋が広がっているのです。
もう1つの敗北は、国連人権理事会の場で先週起きた中国との対決です。
アメリカは、中国の新疆ウイグル自治区での人権状況を討議するよう強く求めたのですが、採決の結果―
賛成17
反対19
棄権11
で否決されてしまい、中国の国際的影響力を見せつけられたのです。
それだけに今回のロシアに対する非難決議の結果に、バイデン政権はひとまず安堵しているはずです。
しかし決議は象徴的な意味しかなく、むしろ先週のOPECプラスの決定こそ原油価格を高騰させ産油国のロシアを利することになると言われています。
バイデン政権は、今回の国連総会での結束を機に、ロシアに対して戦闘の停止を迫る国際世論の形成と具体的な行動が求められていると言えます。
(この動画は2分40秒あります)
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。