【MondayBiz】米国相次ぐ利上げで事業計画見直し【世界経済を先先読み!】

NHK
2022年11月2日 午前11:58 公開

MondayBiz

毎週月曜日に各国で取材にあたる特派員がピックアップ。 マーケットが注目する今週の世界の重要イベントを深読みするコーナーです


輸入拡大目指す中国国際輸入博覧会 開催

これはアメリカとの貿易摩擦を抱える中、海外からの輸入を拡大しようと 習近平国家主席の提唱で始まった、いわば「肝いり」の博覧会です。

市場では10月にスタートした共産党新指導部の経済運営を不安視する見方が出ていますが市場開放や外資系企業との向き合い方で、どのような姿勢が示されるか注目されます。

通貨安続く韓国 10月の貿易統計は7か月連続赤字か

近く発表される予定の10月の貿易統計ですが、貿易収支は赤字と予想され、赤字は7か月連続となる見通しです。

これは少なくとも、2000年以降で最長となっている連続赤字の期間を更新することになります。

背景には、最大の貿易相手国である中国の景気減速とウォン安でエネルギーの輸入価格が押し上げられていることがあります。

貿易が経済を支えてきた韓国だけに、景気の先行きが懸念されます。

イングランド銀行が「政策金利」発表 インフレ対策は

イギリスの中央銀行イングランド銀行が3日「政策金利」を発表します。

インフレ抑制のため、これまで連続して7回利上げを行った結果、現在の政策金利は2.25%となっていますが、それでも9月の消費者物価指数は前の年の同じ月と比べて10.1%の上昇と、依然として高い水準が続いています。

先週、首相に就任したスナク氏も、就任翌日の議会質疑から「インフレの抑制が最優先だ」と話し、市場と対話しながらインフレ対策を進める方針です。

アメリカFRBが金融政策決定会合開催へ

アメリカの中央銀行にあたるFRBは、記録的なインフレを抑えるため大幅な利上げを続けていて、今回もこのペースを維持すると見られています。

一方で、12月の会合に向けて「利上げ幅の”縮小”を議論する」との見方も出ているということですが、こうした見方がでる背景にはアメリカで続く大幅な利上げによって景気の急速な悪化が警戒されていることがあります。

利上げは、企業の資金繰りや一般の住宅ローンなどさまざまな分野に影響が及びます。

FRBは利上げを通じて、景気を一定程度冷やしてインフレを抑えこみたい考えですが、コントロールは難しく、景気を冷やし過ぎてしまうおそれがあるというのです。

前例ない急激な利上げで事業計画見直しを余儀なく…計画一時中断に

南部テキサス州サンアントニオにある商業ビル。

大型レストランなどが入る街を代表する建物でしたが、2年前に新型コロナウイルスの影響で閉店しました。

投資会社の運営を担うリッチ・ゴットブラスさんは100年以上の歴史ある建物の美しい外観を生かしながらモダンな要素を加え、歴史的なランドマークとして生まれ変わらせようと、3月にこのビルを購入しました。

というのもサンアントニオには、自治体の積極的な企業誘致によって、スタートアップ企業が集積しており、ゴットブラスさんも購入したビルをリノベーションして、こうした企業に貸し出す計画を立てていたのです。

しかしFRBによる急速な利上げによってこの計画は変更を余儀なくされました。

購入にかかった費用は一括で支払ったものの、リノベーションに必要な9億円以上の資金は金融機関から借りねばならず、その際のローン金利が急上昇したからです。

この半年あまりで金利は3.5%から7%にまで引き上げられ、毎月の返済額は300万円近く上昇する計算です。

収益の見通しも当初の21%から2.7%に低下したといい、ゴットブラスさんは、出資者と協議のうえ、計画の一時中断を決めました。

しかしゴットブラスさんは、これだけの急速な利上げはまったく予想していなかったそうです。

住宅ローン金利も20年ぶりの水準に

アメリカでは、企業向けの金利だけでなく、住宅ローンの金利も大幅に上がっていて、およそ20年ぶりの水準になっています。

こうしたことから、住宅は9月の販売件数が大きく減少し、7~9月の住宅投資は、-26.4%とマイナス幅が大きく拡大しています。

また景気指標の1つ「PMI」は、4か月連続で好況と不況の節目である50を下回り、製造業の指数も2年4か月ぶりに50を割り込んでいます。

こうした景気減速を示すデータが出てくる中で景気の“冷やしすぎ”を懸念する声が高まっているのです。

そうした中、アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルが「FRBは12月の会合に向けて今回の会合で利上げ幅を縮小するか議論するだろう」と報道。

かつて、利上げ幅をスクープしているだけに市場も大きく注目しているというわけです。

一方で、先週、発表された物価指数は依然として高水準で、記録的なインフレが続いています。

GDPもプラスになっており、このためFRBはインフレを抑え込むためちゅうちょなく大幅利上げを続けられるとの見方も根強いのです。

日本への影響は…円安はどうなるのか

FRBの会合の結果、日本へはどう影響するのでしょうか。

円相場は32年ぶりの「円安ドル高」水準ですが、利上げ幅の縮小が示唆されれば、この流れが変わる可能性があります。

一方、パウエル議長が記者会見で大幅利上げを継続すると発言すれば、一段の円安に繋がるおそれもあります。

当面、アメリカの経済指標や金融政策によって為替相場が決まる状況が続きそうです。

(この動画は8分22秒あります)