ウクライナで戦闘を続けるロシアに対して、アメリカ政府は追加制裁を発表しました。
制裁対象の中には、プーチン大統領の”恋人”とも一部で報じられてきた2004年アテネオリンピックの新体操の金メダリスト、アリーナ・カバエワ氏もついに含まれました。
カバエワ氏をめぐってバイデン政権は「ロシアを過度に刺激したくない」として制裁を見送ってきましたが、EUとイギリスが先行して制裁対象に加えたことから結果的に追随した形です。
その上でロシアが戦闘を続けているためウクライナからは、バイデン政権に対してさらなる措置を求める声が高まっています。
ウクライナのゼレンスキー大統領は「アメリカによる『テロ支援国家』の指定が必要だ。政治目的ではなく自由世界を守るためだ。指定すればテロ国家は存続が困難になる」と「テロ支援国家」の指定を求めました。
アメリカが今テロ支援国家に指定しているのは、北朝鮮、イラン、キューバ、シリアの4か国で、ロシアも指定することになれば、ロシアへの制裁がさらに科され貿易などが著しく制限される見通しです。
ただバイデン政権は、ロシアに対してはすでにかなりの制裁を科しているなどとして、テロ支援国家の指定には慎重な姿勢を示しているのです。
その背景には「ロシアを過度に刺激したくない」という考えがあると見られます。
しかし、こうしたバイデン政権に対してアメリカ議会も不満を強めています。
アメリカ議会上院は、先週、ロシアをテロ支援国家に指定するようバイデン政権に求める決議を超党派で可決したのです。
その上で下院の与党民主党のトップ、ペロシ下院議長がブリンケン国務長官に対してロシアがテロ支援国家に指定するよう要求し、もし政権が行動を起こさないのであれば、議会が行動を起こすと警告したと報じられたのです。
バイデン政権はロシアとの外交交渉の道を狭めたくないという立場と見られますが、議会からはむしろ強硬な姿勢でロシアとの交渉に臨むべきだという意見も出ていて、バイデン政権の今後の姿勢に変化があるのか注目です。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
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