ウクライナ政府はロシアに協力するウクライナ人の摘発を一段と強めています。
ウクライナ保安庁は、ウェブサイトで「ロシアによる偽の住民投票に関与している4000人以上を特定した」と発表し「裏切り者」「ロシアの協力者」などとして刑事訴追する方針を明らかにしたのです。
「裏切り者は必ず捕まえる」という画像やメッセージをSNS上で発信し、住民投票に協力している人物の情報を当局に通報するよう国民に呼びかけています。
中にはロシア軍に銃を突きつけられて従うしか選択肢がないという可能性もありますが、ウクライナ政府としては、国民に対してロシアに協力しないよう改めて釘を刺していると言えます。
ウクライナ人同士が戦う? ロシア支配地域でウクライナ人を徴集か
一方のロシア側は住民投票だとする活動を通して、人々に“踏み絵”のように迫ってロシア側につかせ、ウクライナ国民を分断させる狙いがあるとみられます。
その上、”住民投票”が行われているロシアの支配地域で、ロシア側が兵力不足を補うため、ウクライナ人を徴集している可能性が懸念されています。
ウクライナ軍によりますと、南部ヘルソン州とザポリージャ州では「ロシアのパスポートを受け取った男性に占領者が動員の要請を始めた」としています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」によりますと、東部ドネツク州では「ロシア軍がウクライナの捕虜を強制的にロシア兵として動員する情報がある」と指摘し「国際法違反だ」と警告しています。
さらにロシアが8年前に一方的に併合したクリミア半島では、併合に反対が多かったと言われる少数民族クリミア・タタール人を狙ってロシアが動員をかけているとしてウクライナ政府が非難を強めているのです。
ゼレンスキー大統領は「招集令状のほとんどがクリミア・タタール人対象だ。これはロシアによるジェノサイドだ」と述べています。
ロシア国内だけでなくウクライナの支配地域でも動員の動きを見せているプーチン政権。
ウクライナ人同士を戦わせる狙いと見られますが、決して許されない行為です。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分36秒あります)