【解説】英情報機関幹部「ロシアはサイバー空間で敗北している」(油井'sVIEW)

NHK
2022年8月24日 午後5:01 公開

イギリスの情報機関の1つ、GCHQ=政府通信本部のフレミング長官は雑誌エコノミストに寄稿し「ロシアはサイバー空間で敗北している」と主張しました。

フレミング長官は「ロシアは無責任かつ無差別的な形でサイバー攻撃を行ってきた。地上での侵攻と同様にロシアによる当初のサイバー計画は失敗したようだ」と分析しています。

その理由としてフレミング長官は、イギリスと同盟国がサイバー空間でもウクライナを支援したこと欧米の政府と民間の大手ハイテク企業にかつてなかった強い協力関係があることを指摘したのです。

現にウクライナ政府はマイクロソフトとアマゾンを表彰するなどしていて、ハイテク企業が戦争でいかに重要なプレーヤーかということを内外に示しています。

「ロシアの軍事侵攻を非難する国連決議に賛成しなかった国も多い」

またフレミング長官は、ロシアによるSNSなどで偽情報を発信する情報戦について「プーチン大統領はこれまでウクライナと欧米の国々では情報戦で敗北している」としたものの「他の国々でのロシアの偽情報作戦を侮るべきではない。ロシアによる軍事侵攻を非難する国連決議に賛成しなかった国も多い」と指摘したのです。

実際アフリカや中東の少なくない国々が、ロシアを非難する決議に賛成していません。

そうしたことから特に欧米は、ロシアによる偽情報作戦がアフリカや中東で功を奏していると見ており、アメリカのホワイトハウスも8月発表した対アフリカの戦略文書では、ロシアの偽情報対策が大きな課題の1つとしています。

さらにウクライナのゼレンスキー政権も欧米以外への働きかけが重要だとしており、クリミアをめぐる国際会議でもあえてアフリカやアジアの国々を招待したと強調していて、ロシアとウクライナの情報戦は今後、こうした地域にも広がっていきそうです。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分47秒あります)

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