アメリカ政府はロシアの民間軍事会社「ワグネル」に警戒を強めています。
ロシア軍が不足している「兵器」と「兵力」を補うために暗躍しているのが「ワグネル」で、今回の戦争を機にロシア政府内でその影響力が一気に高まっていると見られています。
アメリカ ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は22日、北朝鮮がロシアの民間軍事会社ワグネルに「兵器」を提供していると非難し、兵器はウクライナで使われるとの見方を示し、また「兵力」についても「ワグネル」が5万人をウクライナに投入していると明らかにしました。
"兵力5万人のうち8割にあたる4万人が刑務所でリクルートした「元受刑者」"
ワグネルの代表プリゴジン氏をめぐってはロシア国内の刑務所を回って、受刑者たちに減刑や金銭と引き換えに兵士になるよう勧誘する動画が拡散され話題になったほか、ロシア人受刑者だけでなくザンビア人という外国人の受刑者まで戦場に送っていたことが明らかになって問題となりました。
さらにプリゴジン氏は、これまで勧誘してこなかった女性の受刑者についても、戦場で看護師や狙撃手や破壊工作員などになり得るとして近く勧誘を始めたい意向を明らかにしたのです。
プリゴジン氏はウクライナの東部ドネツク州の激戦地バフムトを訪れ、ワグネルの戦闘員を視察する映像を公開したことでも話題になりました。
バフムトの最前線で主要な役割を担っているのがワグネルで、ホワイトハウスはバフムトだけでおよそ1000人のワグネルの戦闘員が死亡し、うち9割が元受刑者だと明らかにしました。
米政府に"ロシア正規軍よりワグネルが存在感高めている"と言わしめる理由は
その上でワグネルがウクライナの戦闘に月に1億ドル以上をつぎ込んでいるとも明らかにしていて、アメリカ政府はワグネルがロシアの正規の軍隊よりも存在感を高めている可能性があるとみています。
プリゴジン氏はロシアのプロパガンダや偽情報を発信する組織も率いていて「兵器」と「兵力」それに「情報」の面で台頭し、ロシアにとって今回の戦争で不可欠な存在になりつつあるのかもしれません。
アメリカ政府はプリゴジン氏とワグネルに対する制裁の強化に乗り出すとともに、ワグネルをテロ組織として指定することも検討している模様です。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分42秒あります)