【解説】北朝鮮の挑発的行動の理由は欧米と中ロの対立が原因か (油井'sVIEW)

NHK
2022年10月5日 午後5:31 公開

北朝鮮が挑発的な行動に出る背景には、欧米と中ロの対立があると見られています。

アメリカのオバマ政権でアジア政策を担ったラッセル元国務次官補はNHKの取材に対して「キム総書記はアメリカが中国・ロシアと緊張関係にあるため大胆になっている。北朝鮮に対するさらなる国連安保理の制裁に、習近平国家主席もプーチン大統領も賛成しないからだ」と指摘

米ロの関係悪化を国際的な孤立から脱するチャンスとみた北朝鮮は特に最近、ロシアへ接近ぶりが目立っています。

北朝鮮の外務省のウエブサイトでは「ロシアがウクライナでの軍事作戦に踏み切らざるを得なかったのは、NATOが絶え間なく東方に拡大しロシアの安全保障の深刻な脅威になったからだ」などとロシアを擁護しているのです。

北朝鮮は実際の行動でも、ウクライナに侵攻したロシアを支持する立場を鮮明にしています。


3月   軍事侵攻したロシアを非難する国連決議に、アジアで唯一反対票を投じる

7月   親ロシア派の勢力が表明する2つの地域の独立を承認

9月   ロシアに砲弾や弾薬を売却する計画があると伝えられる(北朝鮮は否定)

10月 親ロシア派の勢力がウクライナの支配地域で行った“住民投票”を、合法的な手続きだと支持する立場を表明


一部の専門家は、北朝鮮が最近ロシアとの関係を「戦略的・戦術的協力」と表現するようになったと指摘し、新たな関係を構築する決意の表れという見方を示しています。

その1人で元CNNの特派員で東アジア情勢の研究員マイク・チノイ氏は「北朝鮮にとって決定的な転機となったのはプーチン大統領と習主席が2月に宣言した"無制限の連携"だった。北朝鮮はアメリカとの関係改善の望みを捨て中ロの陣営に舵を切った」と分析しているのです。

またロシアと北朝鮮の関係に詳しいアルチョム・ルーキン氏も北朝鮮とロシアの「戦略的・戦術的協力」について「両国の関係は中国も含めた3か国のより大きな連携に組み込まれ、北東アジアのパワーバランスに大きな影響を与える」と結論づけています。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分55秒あります)

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