【解説】情報工作も?ロシア民間軍事会社ワグネル プリゴジン氏(油井'sVIEW)

NHK
2022年11月11日 午後0:47 公開

プーチン大統領と関係が深いとされているのが、ロシアの民間軍事会社のプリゴジン氏です。

プリゴジン氏はその民間軍事会社「ワグネル」とともに、ロシアのプロパガンダや偽情報を発信する組織「IRA(インターネット・リサーチ・エージェンシー)」を率いてきました。

つまり「武力」と「情報工作」の両面でプーチン政権の海外戦略を影で担ってきたとされる人物で、欧米が特に今、警戒している場所がアフリカなのです。

アメリカ国務省は「プリゴジン氏によるアフリカでの偽情報作戦」と題した広報文を発表し、警戒を呼びかけました。

広報文は、プリゴジン氏がプーチン政権のプロパガンダをアフリカで広めていて、その手段としているのが「アフリカのインフルエンサーたちとの連携」だと指摘しています。

その上で、プリゴジン氏が連携しているアフリカのインフルエンサーとして、SNSでそれぞれ数十万以上のフォロワーを持つ活動家で、ロシア政府やプリゴジン氏が主催するイベントなどに出席し、プーチン政権の利益となる情報を拡散してきたとされる2人をあげています。

そのうちの1人が上記画像の女性です。

3年前にロシアのソチで行われたロシア・アフリカサミットでプーチン政権を支持したことで「ソチの貴婦人」という異名を持ち、特にフランスのアフリカ政策を厳しく非難する論客で知られている人物だということです。

動画投稿サイトで「フランスのマクロン大統領はマリやサヘル地域で占領と天然資源の略奪を行っているフランス軍を撤退させるべきだ。フランスはこれ以上アフリカにとどまらないで欲しい」と発言しています。

また2人目の上記画像の男性も有名なインフルエンサーです。

特にロシアによるウクライナへの軍事侵攻後は、プーチン大統領の決断を正当化する主張を各地で展開していると言います。

男性はSNSに「欧米諸国はプーチン大統領の話を聞かなかった。プーチン大統領は奪われた土地を取り戻そうとしている。欧米に奪われ破壊された土地だ」と主張する動画を投稿しています。

アフリカでは軍事侵攻後も欧米よりロシアを支持する人が少なくなく、その背景にプリゴジン氏とインフルエンサーの存在があるとして、欧米はいらだちを強めています。

ただ、かつて植民地支配した欧米に対する不信感も要因の1つと見られ、欧米のいらだちはアフリカにおける情報戦で苦境に立たされている裏返しなのかもしれません。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分54秒あります)

ウクライナ情勢の最新情報については地上波での再放送から1週間、NHKプラスでご覧いただけます。

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