【解説】ウクライナ懸念「ロシア側に移送された子ども」の行方 (油井'VIEW)

NHK
2022年8月1日 午後7:14 公開

ウクライナのベレシチュク副首相は、ロシアの占領地域からウクライナに戻ってきた47番目の子どもだとする4歳の女の子と共に写った写真を公開しました。

戦闘が続く中でウクライナ政府が懸念を深めていることの1つが、「ロシア側に移送された子どもたち」についてです。

ウクライナ政府は、ロシア軍によってウクライナの子どもたちが大勢、ロシアやロシアの占領地域に強制移送されているとして子どもたちを取り戻す活動を本格化させる構えです。

ウクライナの子どもの人権担当の政府高官は「ロシア政府は35万人の子どもたちを避難させたと主張しているが、その子どもたちをウクライナに帰国させていない。私たちは強制的な移送・移住とみなしている」と述べ、ロシアに強制的に移送・移住させられた子どもたちはこれまで確認できただけで5100人いるとした上で、さらに多くの子どもたちが移送されているとして強い懸念を示しているのです。

ウクライナは、強制的に運ばれたウクライナの子どもたちがロシア人にされてしまうのではないかという懸念を高めているといいます。

現にロシアでは、ウクライナの子どもたちを対象に、ロシア国籍の取得ロシア人の養子にする手続きを簡素化する方針だと伝えられており、国際社会からは批判の声が強まっています。

ユニセフ(国連児童基金)は声明で「緊急事態の期間やその直後に養子縁組は行われるべきではない。緊急事態で親と離れた子どもを孤児とみなすことはできない」と発表し、ロシア国内でウクライナの子どもを養子にする動きを批判しています。

さらにアメリカ政府の高官も「ロシアは、まずウクライナで孤児を作りその孤児を盗む。盗まれた1000人がロシアの家族に渡された。これはロシアが喜んで仕掛けている恐怖だ」と強く非難しています。

ウクライナの子どもたちをロシアに強制移送したり養子縁組したりすることで、ウクライナという国を消滅させるのがロシアの狙いなのでしょうか。

ジェノサイドではないかという懸念が深まりそうです。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分43秒あります)

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