中東・北アフリカで存在感示す中国の軍事用ドローン
今や中国は軍事用ドローンでも世界有数の輸出大国となっています。
輸出先として特に目立つのが、中東・北アフリカ地域です。
中国はサウジアラビア、UAE=アラブ首長国連邦、イラク、エジプト、ヨルダン、アルジェリアに対して、このおよそ10年間で軍事用ドローン「翼竜2」や「彩虹4」などを売却してきました。
この中国の軍事用ドローンはリビアやイエメンの内戦にも投入されていて、中国は中東地域で武器輸出国として近年、存在感を表してきています。
技術拡散を恐れ中東地域での売却を拒んできたアメリカ
というのも、これまでアメリカは軍事用ドローンの技術が拡散するのを恐れ、中東地域での売却を拒んできたため、その空白を突いて中国が台頭した形です。
そうしたことから、前のトランプ政権はドローンの売却方針を変え、2年前にはUAEに無人機を売却することで合意したのです。
アメリカは中東地域で影響力を維持するため巻き返しを図ろうとした形ですが、バイデン政権になって与党・民主党内では、人権重視の観点から中東地域での無人機売却に慎重な意見も出ています。
民主党のマーフィー上院議員は「中国が攻撃ドローンをサウジアラビアに売却したのを受けて、アメリカが同様の売却をする必要はない。サウジアラビアは同様の兵器をイエメンの市民に間違って使用しており、アメリカは距離を置くべきだ」と発言したのです。
この5年間の世界の武器輸出国を見ると、中国は、アメリカ、ロシア、フランスに次ぐ4番目の大国です。
このうちロシアは、欧米の制裁措置を受けて自国での兵器生産が困難になっているとされ、今後は武器輸出が滞る見通しです。
そのためロシアが減らす分を欧米と中国の防衛産業が取りあう構図になる可能性が高いと見られています。
ウクライナ情勢などを受けて多くの国は防衛費を増額させる傾向です。
軍備縮小の機運は残念ながら低下していて、兵器ビジネスは一段と活発になりそうです。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分24秒あります)