NATO事務総長 “兵器輸出大国”韓国に軍事支援求める 背景に深刻な兵器不足

NHK
2023年2月1日 午後8:08 公開

31日、日本を訪れたNATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は岸田首相と会談、ロシアや中国の動向を念頭に、安全保障分野での協力を強化していく方針で一致しました。ストルテンベルグ事務総長は、日本の前には韓国を訪問。そこで強調したのは、ウクライナへの軍事支援でした。なぜ韓国なのか?背景に、深刻化するウクライナ・欧米の兵器不足がありました。油井キャスターの解説です。

(「国際報道2023」で1月31日に放送した内容です)

ストルテンベルグ事務総長:独裁と専制政治の勝利を望まないのであればウクライナに武器が必要だ。私は韓国に軍事支援を継続し、強化することを強く求める

韓国のユン大統領との会談でこう述べたストルテンベルグ事務総長。なぜ韓国かというと、実は兵器輸出大国だからなのです。この5年間の兵器輸出で、韓国は世界の中で第8位。しかも、この中で近年最も輸出額を伸ばしています。特にロシアによる侵攻後は顕著で、この1年間は過去最高の輸出額になる見通しです。

韓国産兵器をポーランドが「爆買い」

先月、ポーランドに韓国産の戦車や自走砲が到着しました。ポーランドは、去年の夏に韓国から兵器を調達する契約を締結。その数、戦車980両、自走砲648門、戦闘機48機、総額は日本円にして1兆円を超えると伝えられ、韓国メディアは「ポーランドの爆買い」と報じました。

ポーランドは、大量の兵器をウクライナに供与したため、その穴埋めを韓国が担ったのです。

ただ、韓国自身は、ウクライナに対して殺傷能力の高い兵器を供与しない立場で、直接の軍事支援は控えてきました。このため、NATOは今回、韓国に一歩踏み出すよう対応を迫る狙いがあったと見られます。

そして、その背景には、ウクライナ・欧米側にも兵器不足が深刻化しつつあるからと言われています。特に不足していると言われているのが、こちらの砲弾です。

現地は、砲撃戦の様相を呈しています。アメリカメディアによると、ウクライナ軍は月におよそ9万発もの砲弾を発射しています。これは、欧米の防衛産業が生産できる2倍のペースでの使用で、生産が追いつかない状況です。

このため、アメリカは、有事に備えて韓国とイスラエルに備蓄してあるアメリカ軍の砲弾を数十万発、ウクライナに送る計画です。

さらに、欧米は、砲弾の生産能力を一気に強化する計画で、30日パリでフランスとオーストラリアが合意した砲弾の供与もこの一環なのです。

戦闘は激しい消耗戦となっていますが、なくなっているのは、決して、砲弾だけではありません。相当の犠牲者が双方に出ている厳しい状況が続いています。


油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は3分あります)