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中国 食料不足への懸念  ~大豆・トウモロコシなどの食糧の輸入が急増のワケ~

NHK
2021年6月11日 午前9:51 公開

大皿の料理を大勢で食べるのが一般的な中国。しかし今、その食べ残しが大きな問題になっています。ことし4月、「反食品浪費法」が可決。飲食店での大量注文に罰金が科されるようになりました。背景のひとつにあるのは、将来的な食料不足への危機感です。食料の増産とともに、輸入を急速に拡大する中国の戦略とその影響に迫ります。

(「キャッチ!世界のトップニュース」で6月7日に放送した内容です)

食糧の輸入 中国で急拡大

中国では主食となる食糧(米・小麦・トウモロコシ・大豆・いも類)のうち、米、小麦、トウモロコシの自給率は2019年時点で98%と高く、中国政府も供給に問題はないと説明しています。しかし、自国の生産だけでは足りず、輸入に頼らざるを得ない農作物もあります。

中でも大豆は、国内消費の85%を輸入に頼っていて、その量はこの10年間で2倍になりました。

また、十分に自給できているはずのトウモロコシの輸入も、おととしから去年にかけて、3倍以上に急増しています。

中国が輸入を拡大する背景には、人口の増加に加え、食生活の変化もあるようです。資源・食糧問題研究所代表の柴田明夫さんに聞きました。

中国 食糧の輸入増 背景に食生活の変化

柴田明夫さん:中国の経済発展が非常に急速で、暮らしが豊かになるにつれて食生活もずいぶん高度化してきました。肉の消費量が増えるという構図になっています。中国では国民食とされている豚肉の消費が増えているので、国内生産を増やす過程でブタの飼育に必要な、いわゆる飼料穀物が大量に必要となっています。例えば、たんぱく源としての大豆ミールやトウモロコシなどの飼料用作物の需要が急速に増えているので、今後も中国の輸入拡大は収まらないと見ています。

中国 養豚産業の改革 穀物輸入に拍車

輸入拡大に拍車をかけたのが、中国国内の養豚産業の改革です。2018年の夏以降、ブタの伝染病、ASF(アフリカ豚熱)がまん延。大量のブタが殺処分され、飼育頭数は大幅に減少しました。これを機に中国政府は、主流だった養豚農家による小規模生産から、衛生的な施設での大規模生産への移行を進めています。

柴田明夫さん:零細な養豚農家から数十万頭規模で生産できる企業養豚に変えようとしています。しかし、企業養豚にすると餌が大量に必要となってきます。そこでいきなり国際マーケットに頼るという事態になったわけです。例えば、大豆の輸入量は2000年代初頭には2000万トンぐらいだったものが、2010年には5000万トンになり、現在は1億トンを超えています。世界の大豆貿易量は1億6000万トンぐらいですから、中国はその6割以上を輸入しているという構図になっています。やはり豚肉などの重要な食料が不足すると、政権が転覆するぐらいのインパクトがありますから、政府は絶対に食料に対する不満を与えないというスタンスではないでしょうか。

中国の爆買いで食糧価格が高騰

中国による輸入の急増は、世界の食糧価格を押し上げています。中でも大豆の先物価格は、去年の夏から上昇を続け、現在、およそ8年ぶりの高値圏に入っているといいます。

柴田明夫さん:中国による大豆の爆買いに伴って、去年の秋口から大豆の値段が急騰しています。中国が買い付けることによって、アメリカの在庫が取り崩されていくという状況になっていて、この夏には大豆の在庫が一粒も無くなるのではという心配もあるぐらい、アメリカの在庫が減ってきています。

このままいくと1ブッシェル(約27キロ)が18ドルという過去最高のレベルまで大豆価格が上昇する可能性は高いと思います。大豆価格が上昇すれば小麦やトウモロコシの価格も上がっていきます。

穀物の主な輸出国はアメリカ、ブラジル、アルゼンチン、ロシア、ウクライナの国々に偏っていて、主な輸入国というと中国、一国という状況です。まず、輸出国の生産量の変動が国際マーケットに影響しますが、中国は輸入国の立場から、その輸入の仕方で国際マーケットに直接影響を与えるようになっています。マーケットは、ますます不安定になっていると感じています。

中国の爆買いで食糧不足の懸念

影響は、価格の変動にとどまりません。穀物の在庫が中国に偏ることで、中国以外の国々での食糧不足の危険性を高めていると柴田さんはいいます。

柴田明夫さん:世界の食糧生産は、この8年ぐらい記録的な豊作が続いています。在庫量も積み上がってきていて、世界では27億トンの生産量に対して、8億トン近い在庫があります。これは数字上では飢餓問題や食糧問題は起きていないはずなのです。しかし、実際にはこの8億トンの半分以上は中国の在庫という構図になっています。これは中国の在庫分を除くと、決して安心できないレベルです。新型コロナウイルス流行や気候変動による異常気象などで、生産量が上下にぶれたときに大丈夫かというと、非常に不安になるレベルです。

中国の食糧輸入増 日本にも影響

中川栞(「キャッチ!世界のトップニュース」キャスター):最近、日本でも食用油やマヨネーズなどが値上がりしていますが、こうした世界的な動きと関係しているのですね。日本の食料自給率はカロリーベースで4割を切っていて、農産物の多くを輸入に頼っていますから、どこまで影響が広がるのか心配です。

西海奈穂子(「キャッチ!世界のトップニュース」キャスター):柴田さんは、「日本の食料安全保障はこれまで、海外の市場に深く関与することが安定供給につながるという考え方でやってきたけれど、新型コロナの感染拡大や中国の需要の高まりを考えると非常にもろく、あてにならないものだ」と話していました。「日本国内の農業基盤を地産地消型に立て直して自給率をあげるべきだ」と繰り返し指摘していて、飽食の時代に生きる私たちに警鐘を鳴らしているように感じました。