「汚い爆弾」をめぐっては、ロシア政府がウクライナ側を非難する外交的働きかけを一段と強めています。
国連安保理の開催を要請したのに続き、26日、ロシアのショイグ国防相が中国とインドの国防相とそれぞれ電話で会談し、ロシア側の懸念を伝えたということです。
これに対してインドは、シン国防相が「核や放射性物資の兵器の使用は人道に反するため、いずれの側も核の選択肢に頼るべきではない」と述べたほか「早期解決のために対話と外交の道を追求する必要性」を伝えたとしています。
ロシア国防省はアメリカ、イギリス、フランスそれにトルコにも、この問題で電話していて、連日「汚い爆弾」のウクライナ使用説を拡散していますが、欧米は虚偽の説明としています。
その欧米がロシアの主張を否定していることについてロシア大統領府のペスコフ報道官は「私たちが話している危険の深刻さを考えると、欧米の態度は許されないアプローチだ」と述べました。
懸念されるのは、なぜ、そこまで「汚い爆弾」の主張をロシアが根拠を示さずに続けるのかという点です。
みずからが「汚い爆弾」や「戦術核兵器」の使用を想定しているのかと、欧米は警戒を続けています。
欧米警戒 イランによるロシアへの軍事支援
また、これとあわせて警戒しているのが、イランによるロシアへの更なる軍事支援です。
イランは、現在、自爆型無人機「シャヘド136」をロシアに大量に供与しているほか、革命防衛隊の顧問団がクリミア半島に派遣されていると見られています。
さらにウクライナ国防省の情報機関は「ロシアは弾薬が不足しているため、イラン製の弾薬がロシアのウクライナ国境に近いベルゴロド州に送られ、保管されている」と発表しました。
また近い将来、イラン製のヘルメット1500個や防弾チョッキ1500着が送られる計画だとしています。
さらに、イランは、自爆型無人機「アラシュ」の改良版で最近開発されたばかりと言われる「アラシュ2」と「地対地ミサイル」を近くロシアに供与する計画で、この計画に伴い革命防衛隊の新しい顧問団も派遣される見通しと主張しています。
「汚い爆弾」や「イランへの依存」はロシアが戦場で苦境に立たされている表れとも言えるかもしれませんが、さらなる悲劇を招く恐れも高いだけに予断を許さない状況です。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分55秒あります)