【解説】ロシア 侵攻支える法律多数成立ねらいは態勢強化か (油井'sVIEW)

NHK
2022年7月19日 午後7:17 公開

プーチン大統領は14日、軍事侵攻を支えるための数々の法案に署名し法律を成立させました。

その1つが「国家への反逆行為を罰する法律」です。

軍事行動や紛争の途中で敵側についた場合、最大で懲役または禁錮20年の刑に処することなどを定めています。

戦争反対などプーチン政権に異議を唱える声が高まらないようけん制する狙いや士気の低下が指摘されるロシア軍の脱走や投降を阻む狙いもあると見られます。

さらに政府が特定の企業に対して「物資の提供を強制する法律」も成立しました。

これによって企業は政府や軍の要請に従うことが義務づけられていて、政府や軍は強制的に物品を調達できるほか、企業の従業員を夜間や休日に働かせることも可能となります。

このため今回の法律は戦時経済体制に移行する事実上の「経済動員法」とも言われているのです。

これについてイギリス国防省は「ロシア国民が神経質になる『国家動員』の宣言を避けながら、特別軍事作戦を支援させるため」と分析しています。

法整備によって軍や企業を締め付けて、国民に軍事侵攻を支えさせることがねらいとも言われており、今回成立した法律の数が多く締め付けの対象も幅広いのが特徴です。

今回の法律改正にはメディアを対象にしたものもあります。

国内外のメディアが間違った情報や偽のニュースを伝えたとみなされた場合、一定期間の活動停止や登録の無効を命じる権限を、検事総長に与える改正法が成立したのです。

これによってロシア政府はより容易にメディアの活動を停止できることになります。

今回の数々の法律成立はプーチン政権にとって軍事侵攻に反対する国民を排除するとともに、国をあげて戦争を支える強固な態勢を築く狙いと見られますが、市民の権利はさらに厳しく制限され、専制主義の色彩が一段と濃くなっています。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分38秒あります)

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