【解説】Xデーは9.11? ロシアが併合に向け住民投票か(油井'sVIEW)

NHK
2022年7月21日 午後5:37 公開

アメリカは「ロシアがウクライナの主権を侵害し、支配地域を併合する準備をしている」としていますが、ロシアがウクライナの一部地域を併合するために計画しているとされるのが「住民投票」です。

ロシア軍が占拠している4つの州の一部地域で、ロシアを支持する住民だけを集めて「住民投票」を行い、ロシアへの併合を進める根拠にする狙いがあるとみられます。

投票の時期についてホワイトハウスは、ロシアの地方選挙が行われる9月11日の可能性を指摘しました。

ウクライナ国防省の情報機関の幹部も先週「東部や南部でロシアが住民投票を9月11日に行う」という見方を示したほか、「ロシアは併合に向けて住民をロシア人にするためロシア国籍の取得準備も進めている」と警告したのです。

ロシア化の次の標的は「教育」 ウクライナも警戒

さらに「通貨」や「通信」などでロシア化を進めているほか、「教育」のロシア化も懸念されています。

現にロシアのクラフツォフ教育相が今月、ロシア軍が占拠するウクライナ南東部をロシアの教科書を持って訪問。

9月の新学期からウクライナの子どもたちにロシア式の教育を始める方針を明らかにしたのです。

ロシア政府は高額の報酬と引き換えに、ロシアの教師をウクライナに派遣する方針とも伝えられています。

またウクライナ国内でも、ロシアに協力してロシア式の教育を行えるウクライナ人教師を募集していると言われています。

これに対してウクライナ側は、ロシアによる洗脳工作に協力しないよう「ロシアの学校は危険なため、ウクライナの人たちは子どもを行かせないようにしてください。ロシアの過去の行動を見れば子どもをテロの標的にする可能性があります」と記者会見などで呼びかけているのです。

浮かび上がってきた、ウクライナ東部や南部を9月にロシアへと併合する計画。

ウクライナ政府は、この計画をくじくためにもこの夏には反転攻勢を本格化させたい意向と見られ、激しい戦闘が予想される厳しい夏となりそうです。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分35秒あります)

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