報復措置としてウクライナ各地の大規模な攻撃に踏み切ったロシアについて、イギリスの情報機関GCHQ=政府通信本部のフレミング長官は「ロシアは依然有能な軍事組織を保有している」としながらもその軍事力の著しい低下ぶりを指摘しました。
「ロシアの損失は兵力でも装備面でも甚大だ。ロシア軍の指揮官たちは理解しているが物資と弾薬が不足している。兵士達は疲弊している」と述べたのです。
ロシアは欧米の制裁を受けて高性能の兵器やミサイルなどの弾薬が生産できず、在庫が不足しつつあると言われています。
その代わりとしてロシアが重宝し始めているのが、イラン製の無人機なのです。
ウクライナ政府は、ロシアが爆薬を搭載した自爆型のイラン製無人機「シャヒド136」を多用していると警告しているのです。
ゼレンスキー大統領は「ロシアは今回100以上のミサイルとともに、イラン製のシャヒドを含む多数の無人機を投入した。イラン製のシャヒドが使用されたという報告を10分おきに受けるほどだ。われわれの情報ではロシアはイランにシャヒドだけで2400機注文した」と話しました。
イラン製無人機の効果は限定的というのが現時点でのイギリスの評価のようで、イギリスの国防省は「ロシアが複数のイラン製無人機を同時に使用することで、ある程度成功を収めた可能性はある。シャヒド136は爆薬搭載量は少ない。ロシアはおそらく遠距離の攻撃力を期待していたが、その期待には沿っていないだろう」と分析しています。
市民の犠牲…欧米に対しミサイルや無人機から街を守る「防空システム」供与求めるウクライナ
ドイツは、供与を約束した最新の防空システム4基のうち1基をウクライナに輸送したほか、アメリカ政府は供与するとした防空システム8基のうち一部の輸送手続きを加速させるとしています。
ただ欧米側の在庫や生産量にも制限があってウクライナ側の要望とは差があるということで、どのようにウクライナの空を守るのか各国の間で今後も協議が続く見通しです。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分44秒あります)