「ロシア経済の破壊を目指した欧米のもくろみは失敗した」と発言したプーチン大統領が、欧米に代わるエネルギーの輸出先として強い期待を寄せたのが中国とトルコです。
プーチン大統領は「ロシアへの敵対行為や制裁の影響を減らすために重要なのは東部と南部でのパイプラインと港の開発だ。『シベリアの力2』計画といった極東ルートは2025年までにガス供給を増加させるだろう」と述べたのです。
この「シベリアの力2」は、モンゴルを通過して中国に天然ガスを送るパイプラインの建設計画です。
中国に天然ガスを送るパイプラインは現在「シベリアの力」が存在します。
3年前に稼働したもので、その時の式典には、プーチン大統領と習近平国家主席がビデオ中継で出席しました。
シベリアの力2はこれに続く大プロジェクトで、ロシアにとってはヨーロッパにガスを供給してきた「ノルドストリーム」に代わるものとして早期着工を目指しています。
トルコを「天然ガスのハブ」に 天然ガスの供給を増やす考えを示したプーチン大統領
トルコには、ロシアとの間に2年前に稼働した「トルコストリーム」19年前に稼働した「ブルーストリーム」という2つのガス供給パイプラインがあります。
プーチン大統領には、トルコにはロシアだけでなくアゼルバイジャンなど周辺国からも天然ガスが送られてくることから、それらと混合して産地不明のガスとしてヨーロッパなどに売却するという狙いがあるとみられます。
経済制裁でロシア産のガスを購入しないとしているヨーロッパも、産地不明なら購入する国もでてきて対ロシア制裁を骨抜きにできるとプーチン大統領は考え、トルコに協力を求めているとして欧米では懸念を強めているのです。
アメリカ国務省パテル副報道官は「我々はトルコそして同盟・友好国に対してロシアの違法な取り引きや資産の安全な隠れ場所になってはならないと強く求めてきた。今後も同じように訴えていく」と述べています。
中国やトルコが対ロシア制裁の抜け穴になるのでないか。
そんな欧米の懸念がプーチン大統領の強気の背景かもしれません。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
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