「ウクライナの電力供給によってヨーロッパで消費されるロシア産ガスへの依存を減らせる。ウクライナの輸出の利益だけでなくヨーロッパ全体の安全保障を得られる」
ウクライナのゼレンスキー大統領は先週、こう述べ、隣国ルーマニアに電力の輸出を始めたと発表しました。
実はウクライナでは大勢の国民が国外に退避したことから、国内での電力使用が減り余剰電力を抱えているということです。
ウクライナ政府によりますと、電力の輸出は100メガワットと少ないのですが、今後2.5ギガワットまで供給できるとしているほか、将来的には4~5ギガワットの輸出を目指しているとしています。
1ギガワットで原発1基分の電力とも言われるだけにかなりの量と言えます。
輸出先もルーマニアだけではなく、スロバキアやハンガリーなどにも拡大する計画だとしています。
もし実現できれば、ウクライナにとっては戦費や復興費をまかなう貴重な財源となる一方で、ヨーロッパにとっては電力のロシア依存を軽減できるというメリットがあり、欧米の間では注目されているのです。
しかし戦争中だけに安定して電力を供給できるのかが大きな課題となっています。
ヨーロッパ最大の原子力発電所といわれるザポリージャの原発は、ウクライナ側に電力を供給しているもののロシア軍が占拠していて、IAEAは今週、データの送信が途切れたと懸念の声明を発表するなど、稼働のゆくえは不透明です。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分49秒あります)