去年(2022年)11月の白紙革命ともいわれた大規模な抗議活動。これに参加した人たちが、最近になって中国の当局に拘束されているという懸念が出ています。なぜ今になって当局が締め付けを強化しているのか。油井キャスターの解説です。
(「国際報道2023」で1月23日に放送した内容です)
・100人以上拘束か “警察は友達を静かに連れ去った“とする動画も
アメリカを拠点に中国の人権状況を監視している団体CHRDは推定で100人以上が拘束された可能性を指摘し、うち何人かはすでに解放されたものの、全員を解放するよう呼び掛ける声明を発表しました。
CHRDによりますと、今も拘束されていると見られる1人が、拘束される前に友達に次のように話す動画を託したとされています。
拘束されたとみられる人:私が失踪した後、この動画の公開を友達にお願いした。もしこの動画を見ているのであれば、私はすでに警察に連行されたということです。警察は逮捕する名目で私の友達を何人か静かに連れ去った。
中国政府はこの疑惑について公式には反応していないということですが、もし相次ぐ拘束が事実であれば、心配される状況です。
・「国境なき記者団」も声明 “拘束したジャーナリストの釈放を”
1月23日は、武漢の都市封鎖から3年となるのですが、3年前、武漢でも、こうした当局の拘束がありました。その1人が上海の元弁護士で、市民ジャーナリストの張展さんです。
張さんは、コロナ発生後、武漢に入り、現地の状況をSNSで伝え続けたのですが、うその情報を流したとして当局に拘束されました。
公共の秩序を乱した罪で懲役年の実刑判決を言い渡され、現在も服役中なのです。
世界のジャーナリストの権利を守る活動をしている「国境なき記者団」は先月、声明を発表し、張さんの拘束は不当だとして釈放するよう改めて中国政府に訴えました。
張さんは、一時期、抗議のハンガーストライキを行って体調が著しく悪化していると伝えられました。当時に比べると、回復傾向にあるものの、欧米の人権団体は「予断は許さず、一刻も早く釈放すべきだ」としていてブリンケン国務長官が来月中国を訪問する際には、中国に人権状況の改善も強く訴えるよう求めています。
中国で起きた大規模な抗議活動は、当局のゼロコロナ政策と厳しい情報統制に対する人々の不満が表面化したといえますが、もし再び力で抑えつけようとするのであれば、その不満はマグマのようにさらにたまっていくように感じます。
油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分57秒あります)