今回の戦争ではロシア政府が外国メディアに対する締め付けを強める一方で、ウクライナ政府は外国メディアの取材を積極的に受け入れてきました。
ウクライナではロシアによる軍事侵攻から2週間あまりたった3月14日には、外国メディアに情報を提供するための「メディアセンター」を発足し、首都キーウと西部リビウの2か所で毎日記者会見をして、ウクライナ側の情報を発信してきたのです。
しかもユーチューブでライブ公開し、英語の同時通訳もつけ、私たちも東京にいながら会見の内容を知ることができます。
メディアセンターは現地取材のアレンジも行っており、外国メディアを中心に2500人を超えるジャーナリストがメディアセンターを活用したとしています。
さらに外国メディアが関心ありそうな話題も毎日数件を提供しているのです。
例えば軍事侵攻で家を失った人たちに寝る場所として寝台列車を提供する鉄道会社の話や、戦争で傷ついた軍用犬などを治療している動物病院の話などを提供しました。
こうしたことを取材する報道機関としては”プロパガンダ”に利用される可能性を考える必要がありますが、ウクライナとしては外国メディアがロシア側のプロパガンダに利用される可能性も警戒しています。
「ロシア側が占領したマリウポリやヘルソンなどで外国メディアを対象にしたメディアツアーを企画しているが、ロシアのプロパガンダに加担し、戦争犯罪を隠すことになる」と注意を呼びかけました。
ウクライナの警戒する背景には、国際的な関心や支持を失えば強大なロシアに太刀打ちできなくなるかもしれないという危機感の裏返しがあるのかもしれません。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分47秒あります)