【NFTの仕組みとは】デジタルアートが資産に ブロックチェーンの新たな活用

NHK
2021年4月30日 午前10:01 公開

先日、世界をにぎわせた少し不思議なニュースがありました。ツイッターの創業者の1人ジャック・ドーシー氏がサービスを立ち上げてはじめて投稿した「史上初のツイート」が、3月に291万ドル、日本円にして約3億1000万円余りで落札されたニュースです。

(「キャッチ!世界のトップニュース」で4月19日に放送した内容です)

インターネットで検索すれば誰もが見ることができるツイッターの書き込みを3億円で買うというのはどういうことなのか。その答えのカギを握るのがNFTという言葉です。

英語のNon-fungible tokenの頭文字で、日本語では「非代替性トークン」と訳されています。ほかのもので替えが効かない、ただ1つ、もしくは数が限られたものという意味です。

NFTがもたらすデジタル世界の変革

NFTの特徴はデジタルの世界で「本物」とコピーされた「偽物」を明確に見分けられるようにすることです。例えば、デジタル化されたアート作品や、スポーツ選手のトレーディングカード、先ほど紹介した世界最初のツイッターの投稿などが、たとえほかにコピーが作られたとしても、「これが本物だ」と間違いなく言えるようになり、所有したモノを、人に売ったりすることができるようになったということです。

現在さまざまなデジタルデータが、現実世界の美術品のように、価値のあるものとして取引されるようになっています。NFTは世界中で盛り上がりを見せており、世界最大のNFT売買サイトには、1400万点以上が登録されています。NFTの取引を取りまとめた業界サイトによると、ことしの第一四半期の取引額は1600億円以上に上るという報告もあります。なかには何十億円もの価値がつくものもあるNFT。一体どういう仕組みなのか。デジタル資産の取り扱いに詳しい慶応義塾大学経済学部の坂井豊貴(さかい・とよたか)教授に話を聞きました。

坂井豊貴教授:コピーがいくらでもできるデジタルの世界に、希少性の概念を持ち込んだのがNFTです。ほぼ無料で無制限にコピーが作ることができるデジタルの世界においてコピーができないということは、画期的なことです。

そのカギを握るのが、ビットコインなどの暗号資産で使われる「ブロックチェーン」の技術です。

記録の改ざんがほぼ不可能であるというブロックチェーンの特徴を利用し、デジタルデータにも「本物」であることを示す、いわば証明書を貼り付けることができるようになったのです。この仕組みを利用することで、デジタルの世界でもアート作品や音楽などを、数を限定して発売することが可能になったと坂井教授は解説します。

坂井豊貴教授:例えばこの曲は人数限定で聴かせましょうということで、100個NFTを売るなどすれば、希少性のある曲を歌手が発行できるようになります。現実世界で例えると、版画と同じです。版画家は、版画を原理的には何枚も刷ることができます。ところが制限なく刷ると、希少性が下がって値崩れを起こしてしまいます。だから版画家はあまり多くの版画を刷らないものです。そして刷り終わったあとには、原版に傷を入れるとか、あるいは割るとか、そういうことをしてもう刷れなくしてしまいます。買い手に対して「希少性が担保されますよ」、ということを信頼してもらうためです。同じことがNFTによって、デジタルの世界でもできるようになったということです。

高橋彩(「キャッチ!世界のトップニュース」キャスター):言われてみると確かに今までデジタルのコンテンツには「1つだけ」とか「数量限定」というものはありませんでしたよね。そしてこれは、価値がつくかどうかは別にして、デジタルデータであればなんでもNFTにすることができるということですよね。

小林雄(「キャッチ!世界のトップニュース」キャスター):高橋さんの初めてのテレビ出演の動画とかも10点限定でNFT化するとプレミアがつくかもしれないですね。このNFTによって、デジタル経済は一層広がりをみせると期待されています。どのような産業が発達していくのか。坂井教授に聞きました。

NFTで成長する産業 日本は?

坂井豊貴教授:コンテンツ産業の成長が期待できます。アニメのカードとかですね。あとはスポーツ業界とNFTというのは非常に相性がいいです。選手のカードをNFTで発行するなどです。ファンに商品を買ってもらっているサービスは新たな収益源が得られる、そこが非常に大きいことだと思います。

日本はNFTを扱う会社が成長しています。1つは、ブロックチェーンゲームです。

どんなゲームかというと、ゲームの中で得たアイテムをほかの人に売ることができます。ゲームの中で勝ち得たものに対して資産性をつけることができるんです。そのようなブロックチェーンゲームの有力な企業が、日本にはいくつかあります。かつて日本は暗号資産やブロックチェーンなどの分野で先進国になりかけていました。ところが金融庁が大変厳しい規制をしいてしまい、今では日本はブロックチェーンの先進国ではありません。このタイミングで政府がNFTに対して規制をかけてしまうと、せっかく育っている今の日本のNFT産業が、一気に潰れてしまいます。そのようなことだけはしてはいけません。法律の網をかけずに自由にNFT産業を発達させた方が、必ず日本の国益になるはずです。

NFTがもたらすデジタル世界の変革

高橋:NFTを駆使した日本のゲームも出てきて、自分で得たゲームのアイテムを売ったり買ったりするなら、ゲームをする意味も変わってきそうですね。

小林:そうですね。ゲームの中の土地を売り買いするなんてこともあるようで、モノを持つという感覚が変わってきているような感じがしますね。デジタル上の表現に「これが本物だ」という証明をつけられるNFTの特徴は、例えば、本人を確認する公的な証明書や、ワクチンを接種したことを示す証明書をデジタルで発行した際などに応用できるとのことで、デジタル化する世界のさまざまな場面で登場する可能性があります。将来、気がついたら身の回りにNFTがあふれていたというということにもなるかもしれません。