ウクライナ政府は今週、南部ヘルソン州でウクライナ側が提供する電話やインターネットなどの通信サービスが、ロシア軍によって全て遮断されたと発表しました。
代わりにロシア側が提供する通信サービスを利用させ、ロシア側のプロパガンダを信じ込ませるねらいだと危機感を強めています。
それを裏付けるかのように、ヘルソンで撮影された映像には、ロシアの携帯電話のSIMカードを購入するため、列を作る市民の姿が映し出されていました。
ヘルソンではロシアの通貨ルーブルでの支払いや、ロシアのパスポート発給、またロシア語の放送なども進み、ロシア支配を既成事実化するいわゆる「ロシア化」が急速に進行しています。
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ロシアがヘルソン州を重要視する理由は、ロシアが現在実効支配しているクリミアの人たちの生活に欠かせない水源だからです。
ウクライナ側はロシアの実効支配に抗議して、これまでもクリミアに流れる水の供給を停止してきました。
そのためロシアは、クリミアの水を確保するためにも、ヘルソンをおさえたいのではないかとみられています。
ウクライナ国防省の情報機関は、ロシア政府のねらいについて、「ロシア帝国の時に存在したクリミア、ヘルソン、ザポリージャにまたがる行政区の復活を目指している可能性」を指摘しています。
アメリカ政府も、ロシア政府がヘルソン州を一方的に分離独立させて、ロシアの支配下に置く可能性があると強い懸念を表明しました。
戦闘は東部だけではなく南部でも激しさを増す恐れが出てきています。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分45秒あります)